外国人技能実習生にも適切な労働基準法の運用を
2016/09/21   労務法務, 外国人雇用, 労働法全般, その他

はじめに

9月20日、鳥取労働基準監督署は、外国人技能実習生8人に1週間の法定労働時間を超えて最長23時間半の時間外労働をさせた上、週1回の休日を与えず、時間外や休日の労働に対する割増賃金不払いなどをしたとして、労働基準法違反の疑いで同県内の会社と同社の代表取締役を書類送検しました。
外国人技能実習生を実習実施機関が受け入れるにあたり、労働基準関係法令の遵守がなされなければなりません。
しかし、外国人技能実習生の労働条件確保のための監督指導及び送検の状況(平成27年)によると、以下のことが認められます。
・労働基準関係法令違反が認められた実習実施機関は、監督指導を実施した5173事業場(実習実施機関)のうち3695事業場(71.4%)
・主な違反内容は多い順に、①違法な時間外労働など労働時間関係(22.6%)、②安全措置が講じられていない機械を使用させていたなどの安全基準関係(20.8%)、③賃金不払い残業など割増賃金の支払い関係(15.0%)
また、法令違反で是正が行われた主な事例として、以下のことが挙げられます。
・時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する割増賃金の未払
・最低賃金以上の賃金不払
・36協定の協定時間を超えた違法な時間外労働
・有機溶剤業務、特定化学物質業務に関する特殊健康診断や、粉塵作業の作業環境測定の不実施

時間外労働23時間 割増賃金すぐ払わず…アパレル業者書類送検 実習生受難 鳥取労基署
外国人技能実習生の実習実施機関に対する平成27年度の監督指導、送検状況(PDFファイル)

労働基準法上の規制

外国人の技能実習生は、入国1年目から労働基準法上の労働者として、労働基準関係法令の適用を受けます。
したがって、技能実習生を受け入れている事業主は、労働基準関係法令を遵守する必要があります。

◆労働条件の明示(労働基準法15条)
・労働契約期間
・就業場所および従事すべき業務
・労働時間(始業・終業時刻、休憩時間、休日等)
・賃金(賃金額、支払いの方法、賃金の締め切りおよび支払日)
・退職に関する事項(定年の有無、解雇事由等)

◆賃金(労働基準法24条)
・受け入れ企業から直接技能実習生に、通貨でその全額を、毎月1回以上、一定期日に支払わなければならない。

◆時間外・休日・深夜割増賃金(労働基準法37条)
・時間外労働に対しては25%以上
・深夜業(午後10時~午前5時の労働)に対しては25%以上
・休日労働に対しては35%以上
の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

◆最低賃金(最低賃金法4条)
賃金は、最低賃金額以上の額を支払わなければならない。

◆労働時間(労働基準法32条、34条、35条ほか)
・原則:週40時間、1日8時間(法定労働時間)
・労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は60分の休憩を付与
・少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を付与(法定休日)
・例外:時間外・休日労働をさせるには、「時間外・休日労働に関する協定」(36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出る必要がある。
    時間外や休日に労働させる場合は、36協定の範囲内でなければならない。

◆年次有給休暇(労働基準法39条)
◆中間搾取の禁止(労働基準法6条)
◆強制貯金の禁止(労働基準法18条)
◆賃金台帳の作成(労働基準法108条ほか)
◆解雇(労働基準法20条、労働契約法17条)
◆就業規則(労働基準法89条)
◆寄宿舎(労働基準法96条ほか)
◆安全衛生教育(労働安全衛生法59条、労働安全衛生規則35、36条など)
◆就業制限(労働安全衛生法61条、労働安全衛生法施行令20条)
◆健康診断の実施(労働安全衛生法66条)

コメント

労働者の適切な労働条件を確保するためには、労働基準法を順守することが大切です。
労働基準法に違反した場合、刑事罰を科されたり、付加金の支払いを命じられることがあります。
しかしながら、技能実習生に対してだけではなく、日本人労働者に対しても労働基準法に違反している事業者が見受けられました。
外国人技能実習制度は、技能実習生へ技能・技術・知識の移転を図り、開発途上国の経済発展を担う人材育成を目的としたもので、日本の国際協力・国際貢献の重要な一翼を担っています。
労働基準法の遵守された条件下で技能実習生が労働できることは、技能等の円滑な習得に繋がり、ひいては事業者にできる国際貢献にも繋がるでしょう。

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