逆パワハラと企業の対策について
2016/08/31 労務法務, 労働法全般, その他

企業の皆様にとって、パワハラ対策は軽視することができない問題です。パワハラというと、
「部下を他の従業員の前で怒鳴りつける」や、
「就業時間間際に膨大な作業を押し付ける」、
「過剰なノルマをを課す」といった、
上司から部下に行われるというイメージが強いかと思います。
ですが、最近は部下から上司へのパワハラいわゆる逆パワハラが増えているそうです。
そこで、今回は、逆パワハラについて見てみようと思います。
企業は逆パワハラに対応しなければいけないか?
厚生労働省によれば、パワハラとは、同じ職場の人間に対して、①職場内での優位性を背景に、②業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的な苦痛を与え又は職場環境を悪化させる行為をいいます。
パワハラが、「上司から部下に対してされるもの」というイメージがあるのは、①職場内での優位性という特徴があるからです。
ですが、「職場内での優位性」は、職務上の地位(上司と部下の関係)からしか生じないというわけではなく、専門知識や経験の差に基づく場合も含まれます。
したがって、部下による上司へのパワハラもありえることになります。
具体例
①部下による過度の「パワハラ」の主張
最近では、企業コンプライアンスの強化がされ、昔のような上司によるパワハラに対しては、企業は厳しい態度で臨むことが多くなっています。
これ自体は歓迎すべきことですが、その結果、上司は、パワハラと認定されることをおそれ、厳格な態度で部下に接することを避けることが多くなりました。
部下の側でも、そのような上司の心境に気付いており、それを逆手にとって、増長した態度を取る場合があるようです。
例えば、上司が指導や注意をする度に「それパワハラですよ。」と言い返したり、「労基に申告しますよ。」という場合がそれです。
もちろん、適切な指導・注意である限り、パワハラにはあたらないはずですが、管理職の方達のとっては精神的圧迫は小さくはないようです。
②部下と上司の知識格差
上司といえども部下と比較して全てが勝っているというわけではありません。実際、最近の若い方は幼少期からパソコンを使用している方も多く、デジタル機器に関する知識については上司より部下の方が豊富ということも多々あります。
そうすると、「上司より部下の方が知識が豊富」という構図が生じ、その結果、「課長はこんな簡単なことになんでそんなに時間がかかっているんですか?」や、「そんなこと小学生でも知っていますよ。」といった辛らつな言葉を部下から言われる上司も少なからずいらっしゃるようです。
③気弱な上司に対する無視等
コンプライアンスの強化によって、上司の態度が変わった結果、上司と部下の「縦の関係」が曖昧になってしまうこともあります。加えて、おとなしい・気弱といった上司の性格が組み合わさった結果、「ハゲ」、「チビ」「スケベ」といった暴言を上司に言う部下もいるようです。
また、職務上の命令を無視したり、従わないといった形でそのような上司をないがしろにするパターンもあります。
対策
企業の側としては、「部下の監督は、上司の職務であり、逆パワハラは上司の能力不足が原因である。」という認識が強いのではないかと思います。
実際、逆パワハラは、上司の適切な権限の行使によって解決するものが多いのですが、だからといって、逆パワハラに対して企業が無関心であっていいわけではありません。
実際に、部下からの誹謗中傷が原因で、会社からの事情聴取を受け、会社が十分な対応をとらずに上司の配置転換を行ったため、上司が自殺してしまった事例もあります。
この事例では、上司の労災の認定が認められました。
労災が認められると、企業の負担する保険料が増額されたり、企業が調査を受けたりするという不利益が生じます。
また、「労災があった」という事実それ自体が企業のイメージダウンを招くことになります。
また、「企業が逆パワハラを防ぐべきだった」と判断された場合、企業に損害賠償責任が課される場合もあります。
このような事態を防ぐために、ある程度、管理職社員の権限の行使についてマニュアルを作成する等をして、「どのような場面で部下に注意・指導することができ、その場合はどのように振舞えばいいのか」が、管理職社員の中でイメージすることが出来るようにする必要があるでしょう。
また、性格上、部下の指導に及び腰になってる管理職社員に対しては、適切な監督権の行使も業務内容に含まれていることをしっかり伝え、意識改革を図ることも必要です。
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