「中小企業等経営強化法」施行の概要
2016/07/05 税務法務, 法改正, その他

はじめに
7月1日、中小企業等経営強化法が施行されました。これにより一定の規模以下の中小企業は固定資産税の軽減や金融支援等が受けられ、経営力の向上を図ることができます。今回はそんな中小企業等経営強化法の概要について見ていきたいと思います。
中小企業等経営強化法とは
少子高齢化による労働人口の減少や経営のグローバル化が進む中、中小企業や小規模事業者の経営力を強化することを目的として「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律」の一部を改正したものが中小企業等経営強化法です。その経営支援骨子は、事業所管大臣が事業分野別に事業者が行うべき経営力向上のための取組みの指針である「事業分野別指針」の策定、各事業者の経営力向上計画の認定及び支援、認定経営革新等支援機関の業務の拡大が挙げられます。その中でも目玉となるのが経営力向上計画の認定とそれに伴う支援です。一定期間の減税措置と金融支援の特例措置を受けることができるようになります。
固定資産税特例
各中小企業は経営力向上計画を策定し認定を受けることによって、新たに導入した機械装置等の固定資産税が減額されることになります。対象の中小企業とは資本金1億円以下の企業及び事業者であり大企業の子会社である場合を除きます。制度内容を細かく見ていきますと、まず上記所管大臣が策定した「事業分野別指針」 に沿った内容の経営力向上計画を策定します。 それを各事業分野別主務大臣に申請し認定を受けることになります。提出から認定までの審査期間は最大30日です。認定を受けますと、新たに導入する価格160万円以上であり生産性が1%以上向上する機械装置の固定資産税(償却資産税)が3年間2分の1となります。適用期間は平成30年末までで、それまでに取得した機械装置につき次年度から3年間となります。機械装置の取得後に計画を策定し認定を受ける場合には、取得日から60日以内に計画書が受理される必要があります。
金融支援特例
認定を受けた中小企業は低金利融資、民間金融機関の融資に対する信用保証、債務保証等により円滑な資金調達が可能となります。まず商工中金による独自の低金利融資を受けることが出来ます。民間の金融機関から融資を受ける際には、信用保証協会による保証が拡大されます。海外支店や現地法人が海外の金融機関から融資を受ける際に日本政策金融公庫から最大4億5000万円の保証を受けることが出来ます。それ以外にも食品製造業者向けの食品流通構造改善機構による保証等もあります。
コメント
中小企業は経営力向上計画を策定して認定を受けることによってこれらの支援を受けることが出来ます。経営力向上計画は事業分野別指針(中小企業庁HPで公表)を参考に、自社を取り巻く環境、経営力向上の目標、財務状況等を記載することになります。具体的には計画期間を3年~5年とし、労働生産性の目標伸び率を記載します。3年なら1%以上、4年なら1.5%以上、5年なら2%以上とし営業利益、人件費、減価償却費を足したものを労働者一人あたりの就業時間で割ったものが労働生産性となります。自社の現状認識からこれらの目標値に達するために必要な資金や調達方法等も記載することになります。実質A4用紙2枚に収まるもので、申請に要する労力は高くはないと言えます。固定資産税率は東京都で1.4%。これが3年間半額になります。あまり大きな恩恵は感じられないかもしれませんが1億円を超える高額機械等になるとそれなりに減税効果もあると言えるのではないでしょうか。また金融支援特例による保証枠の拡大も新規事業開拓の場合2億円から3億円に拡大されております。商工中金による低金利融資もあり資金調達面ではある程度の恩恵が期待できます。中小企業や小規模事業者は、まず計画書の認定を検討してみてはいかがでしょうか。
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