改正農地法施行後、初の銀行出資~農地の活用~
2016/06/17 不動産法務, 法改正対応, 法改正, その他

改正後、銀行が農地所有適格法人に初出資
三井住友銀行は15日に来月を目途に、農地を所有して農産物を生産する「農地所有適格法人」を、新たに、秋田県の農業法人等と共同で7月末に設立すると発表した。
新しく設立する農業法人は、他の農家から、田植えやイネの刈り取りなどの農作業を請け負ったり、農地を借りたりしてコメの生産を手がけ、生産をやめる農家から農地を買い取るなどして大規模化を進め、10年後には秋田県内での生産面積を1000ヘクタールまで拡大する計画となっている。
4月に改正農地法が施行されてから、農地所有適格法人に銀行が出資するのは初めてとなった。
農地を所有できる法人
農地を所有できる法人は、農地法改正平成28年4月施行後であれば、農地所有適格法人であり、施行前であれば、農業生産法人に限られる。
法人であれば人と同じように農地の所有者となることも可能なはずである。しかし、会社は「利潤の追求」を目的とするため、利益が上がらない事業からは撤退することも少なくない。そのため、継続的に営農していくことが期待される農地について、所有権を営利目的の会社が容易に取得できることはなじまないという政策的な配慮から、上記制限が設けられている。
法改正による農地を所有できる法人の要件緩和
農地を所有できる法人(旧法「農業生産法人」)は2条3項規定の「組織形態要件」「事業要件」「構成員要件」、「業務執行役員要件」が必要である。このうち、新法では、「構成員・議決権要件」、「業務執行役員要件」の一部が改正又は削除されている。
(1)「構成員・議決権要件」
①「構成員」となる農業関係者と議決権要件
旧法における「構成員」となる「農業関係者」は「常時従事者、農地を提供した個人、地方公共団体、農協等」であったが、新法では、「農地中間管理機構又は農地利用集積円滑化団体を通じて法人に農地を貸し付けている個人」にまで認められるようになった。また、議決権要件は「総議決権の3/4以上」だったのに対して、新法では「総議決権の1/2超」と緩和されている。
②農業関係者以外の構成員
旧法では農業関係者以外の構成員は「法人と継続的取引関係を有する関連事業者等に限定」されていたが、新法では撤廃された。そして、保有できる議決権は旧法では「総議決権の1/4以下」とあったが、新法では「総議決権の1/2未満」となっている。
(2)「業務執行役員要件」
旧法では、業務執行役員要件を満たすためには「役員の過半が農業(販売・加工等含む)の常時従事者(原則年間150日以上)であり、更にその常時従事者である役員の過半が農作業に従事」していなければならなかった。他方、新法では、「役員又は重要な使用人(農場長等)のうち、1人以上が農作業に従事」していれば「業務執行役員要件」を満たすことができるに至った。
コメント
全国各地で、農業従事者の高齢化や後継者不足から農地が耕作放棄されて問題となっている。耕作放棄地が増えることにより最も懸念される問題は、食糧自給率への影響である。約50年前の昭和40年度の食料自給率は73%(カロリーベース)の水準だったのに対して、平成26年度では、39%(カロリーベース)にまで低下し、食糧を輸入に大きく頼らなければならなくなっている。そのため、平成28年改正施行法では、一般法人による農業への参入を促進し、耕作放棄地を減少させるために、農地を所有できる法人の要件が緩和されるに至った。
今回の改正により、従来に比べて一般企業が農業分野へ参入しやすい環境になったといえる。また、近年ではTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の締結により、日本の安全・安心な環境下で栽培され、その上、味が良い高品質な日本の農作物が、海外へ付加価値をつけて輸出されることへの期待も高まっている。
今回の農地法改正を契機に、これまで第3次産業へ力を入れていた企業が、第1次産業である農業へ目を向けることで新たな事業が生まれることが増えていくものと予想される。
そのため、企業の法務部門は、従来扱った経験のない新たな法律や制度に触れる機会が増えるものと考えられる。今後、企業の法務部門はそれらの情報にも目を配り、いつそれらの制度・法律に触れることになっても恐れずに、柔軟な対応ができるよう視野に入れておくことも必要ではないかと思われる。
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