独禁法の課徴金算定方法、見直しへ
2016/02/26 独禁法対応, 独占禁止法, その他

はじめに
公正取引委員会は23日、独禁法違反者に対する課徴金の算定方法を見直す方針を固めました。現行法では課徴金の算定率は業種によって異なっていますが、それを統一し公取委の判断で柔軟に額を決定できる方向で検討されています。
課徴金制度
課徴金とは一定の独禁法違反行為に対して課される金銭的制裁を言います。独禁法は不当な取引制限、私的独占、不公正な取引方法といった行為を禁止しており、その中でも公正な競争秩序に影響の大きい行為類型に対して課徴金を課しています。課徴金は罰金とは性質を異にし、違法な行為によって得た利益を剥奪するという意味合いがあることから算定は売上の何%というように決められています。それゆえ通常罰金に比べて相当の高額になることが多く、企業経営を傾けさせかねないものとなり得ます。現在の算定率は、不当な取引制限、支配型私的独占で製造業が10%、小売業が3%、卸売業が2%、共同の取引拒絶、差別対価等でそれぞれ3%、2%、1%となっております。
改正案
(1)算定率の統一
以上のように算定率は業種によって異なっていますが、改正案ではこれを統一する方向で検討されています。現行法の算定率ですと、例えば製造業者が関連子会社である下請け会社に製造させた場合、本来なら算定率が10%であるところ、子会社を介在させることで独禁法上は卸売業者とみなされ2%になってしまうという弊害が生じていました。そこで現状に即した適切なものとなるよう算定率の統一が考えられております。
(2)裁量制導入
上で述べたように業種間で算定率を一定にすると、本来製造業者よりも競争阻害性の低い卸売業者に対しても、製造業者と同じ算定率となってしまうということも考えられます。そこで公取委の裁量で算定率をある程度柔軟に決定できるよう、裁量制の導入が検討されています。違反行為の重大性、利益の大小、公取委の調査への協力の度合いといった点を加味して算定率を公取委の裁量で増減できるようになるというものです。
コメント
今回の改正案で注目すべきはやはり裁量制導入の点と言えます。同じ製造業、小売業といってもその規模は業者によって千差万別ですし、また独禁法違反行為の態様も様々です。それに対して課徴金の算定率はかなり画一的なものであり、事案に即した課徴金の額を設定しづらいという側面があったと言えます。またカルテルや談合を自発的に公取委に申告した場合、その順位に応じて課徴金を減免する課徴金減免制度は、密行性の高い違法行為の早期解明が主眼でしたが、減免をどれくらい受けられるかは早い者勝ちな面もあり、その後調査に協力しても算定率が変わらないというものでした。裁量制を導入することによって、業者の規模、違法性、調査協力といった様々な要素を加味して柔軟に課徴金を決定できるようになります。また課徴金減免制度と合わせて、業者に違法行為の自己申告、自主解決を促すことにもつながると言えるでしょう。反面、公的機関に広範な裁量権を付与した場合、往々にして濫用の恐れも生じるといえます。裁量制導入には運用の透明性公平性を確保することにも配慮が必要と言えるでしょう。
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