特商法が株式会社北一グルメを撃つ!
2015/09/07 消費者取引関連法務, 特定商取引法, その他

事案の概要
株式会社北一グルメは、全国の消費者に電話を架け、ズワイガニ等の海産物の電話勧誘販売を行っていた。同社は、電話勧誘販売をするに際し、消費者に「いい蟹が入ったので以前買って頂いた方にも連絡をしています。」などと告げたほか、販売契約の解除を妨げるためにも「生ものなのでキャンセルできない。」などと告げていた。また、断った消費者に対してその電話で継続して勧誘を行っていた。これに対し、関東経済産業局は、特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)により次の事項に基づき3か月間の業務停止命令を行った。
①再勧誘
特商法は、契約を締結する意思がない者に対し契約締結の勧誘をしてはならない旨規定している。株式会社北一グルメは、本件商品の売買契約の締結について勧誘をするに際し、顧客が「年金生活者なので贅沢はできないから要りません。」と本件商品の売買契約を締結しない旨の意思表示をしたにもかかわらず、その電話で継続して勧誘を行っていたため、特商法第17条に違反した。
②契約書面の記載不備
特商法は、当該契約の内容を明らかにする書面を交付しなければならない旨規定している。株式会社北一グルメは以下の内容を契約書に記載しなかったため、法第19条第1項に違反した。
・書面の内容を十分に読むべき旨の記載
・契約内容を明らかにした書面を受領した日から8日を経過するまでは、書面により当該契約の申込みの撤回又は契約の解除を行うことができる旨の記載
・申込者等が当該契約の申込みの撤回又は契約の解除に係る書面を発送した時、撤回又は解除の効力が生ずる旨の記載
・契約の申込みの撤回又は契約の解除があった場合、商品引渡の費用は株式会社北一グルメの負担とする旨の記載
③不実の告知
法は、契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため不実のことを告げてはならない旨規定している。株式会社北一グルメは、実際には通常価格であるにもかかわらず「3万円するところ、半額の1万5千円でよい。」など特別の値引き価格であるかのような不実告知をし、法第21条第1項第2号に違反した。また、「生ものなのでキャンセルできない。」など契約解除の事項について不実告知をし、法第21条第1項第5号に違反した。
さらに、当該顧客への販売実績がないにもかかわらず、「以前、うちから蟹を買って行きましたよね。ご購入頂き、ありがとうございました。いい蟹が入ったので以前買って頂いた方に連絡をしています。」など当該売買契約に関する事項であって顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要な点について不実告知をし、法21条第1項第7号に違反した。
コメント
近時、消費者、特に高齢者をターゲットにした電話勧誘によるトラブルは問題視されるようになった。企業側は、契約を締結しない意思表示をした顧客に対し意識せずにその電話によって話を進めると再勧誘の禁止に抵触する危険性があることや、契約書面に書くべきことを書かずにいると法令に違反することを認識しなければならない。法令遵守の意識は、法務部員に留まることなく全社員に向けて発信されなければならず、普段見慣れない
法令については社内で研修を行う等、具体的な対策が必要となる。
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