日本政府、イランへの経済制裁を解除へ
2015/08/11 海外法務, 海外進出, 外国法, その他

1 日本による経済制裁の概要
イランは核開発を進めたことが原因で、2006年12月に国連安保理決議がなされて以降、国際社会による経済制裁が課されてきた。日本も、国連安保理決議を受けて、『外国為替及び外国貿易法(外為法)』に基づき、イランに対して経済制裁を課してきた。具体的には、日本企業によるイランのエネルギー分野への投資を禁止したり、核開発計画に関係する個人や会社の資産を凍結したりした。
なお、外為法は、①国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるとき、②国際平和のための国際的努力に日本として寄与する必要があると認めるとき等に、経済制裁を課すことができると規定する。国連安保理決議がなされた場合、上記①と②に該当する。
2 なぜ日本は経済制裁を解除するのか
今年の7月14日に、イラン核開発問題について協議をしていたアメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・ロシア・中国の6か国とイランが、最終合意に達した。その内容は、イランが核開発能力の制限と国際原子力機関(IAEA)による査察を受け入れる代わりに、国際社会が経済制裁を解除するというものである。これによって、外為法における①国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるとき、②国際平和のための国際的努力に日本として寄与する必要があると認めるとき、という要件には該当しなくなったため、日本も経済制裁を解除することとしたのである。
3 イランの大きな可能性
イランは、世界第4位の原油埋蔵量及び世界第1位の天然ガス埋蔵量を有する有数の産油国であり、経済制裁前には日本の主要原油輸入先であった。経済制裁の解除によって、日本はイランからの原油輸入を拡大することができ、原油調達先の多様化を実現することができる。これは日本のエネルギー安全保障上、非常に有益である。
また、イランは人口が7740万人と多く、今後も増加が予測されている上に、経済制裁の解除によって経済が成長すれば、購買力も増す。そのため、イランは、市場としても魅力的なのである。
4 コメント
欧州諸国は、官民一体の訪問団を派遣し、イランとの関係強化の動きを強めている。これに対して、日本は出遅れ感が否めないという。
本件からいえることは、日本企業としては、経済制裁のようなある種の「法規制」の解除に対して、それを見据えた動きが鈍かったために、ビジネスチャンスを逃してしまうリスクに見舞われていることは否定できない。日本国内においても、規制緩和など「法規制」の解除が多方面で検討されているのであるから、情報感度を上げ、それを見据えた動きの迅速化が求められているといえる。
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