改正派遣法成立「26業務」の制限撤廃の影響は
2015/07/29 労務法務, 労働者派遣法, その他
参議院厚生労働委員会は理事懇談会を開き、労働者派遣法の改正案について、今年6月30日、委員会を開いて質疑を行い、
実質的に審議入りすることで与野党が合意した。労働者派遣法の改正は、今国会での成立が見込まれている。
現行の派遣法では、企業が派遣労働者を受け入れられる期間は最長3年間とされているが、いわゆる「26業務」は例外として、期間制限がもうけられていない。
「26業務」とは、専門的知識や技術などを必要とする業務、または特別の雇用管理を必要とする業務のことをいう。事務用機器操作業務が「26業務」全体の約4割を占める。さらに財務処理業務、取引文書作成業務、ファイリング業務順でつづき、この4つの業務で全体の3分の2を占める。今回の法改正では、派遣労働者の一層の雇用の安定・保護等をめざし、以下の点が変更される。
① 事業所単位の期間制限
派遣先の同一の事業所における派遣労働者の受入れは3年を上限とされている。それを超えて受け入れるためには、
過半数労働組合等からの意見聴取が必要とされる。意見があった場合には対応方針等の説明義務を課す。
② 個人単位の期間制限
派遣先の同一の組織単位(課)における同一の派遣労働者の受入れは3年を上限とする。
今回の改正については、期間制限についてのルールが分かりやすくなり、企業による正社員への雇用の切り替えが進む可能性があるとの肯定的見方もある。しかし、法改正後は、企業は3年ごとに人を入れ替えることで、無期限に派遣労働者を雇用しつづけることができる。労働者の立場からみれば、人件費の増大を嫌う企業から、派遣形態での雇用を強いられるおそれがある。今後は「26業務」についても、最長3年で雇用契約が切られる「雇い止め」は、増大すると考えられる。
企業側にとっても、最大の派遣労働者を抱えるIT業界においては、今回の改正を通じ、IT業界への就職を嫌い、ますますエンジニア不足が進むのではないかとの懸念が抱かれている。
今回の改正を通じ、労働者は、不安定な周辺雇用に置かれる傾向が強まる一方、IT業界のような業界においても、中長期的に見て競争力の高い優秀な人材を失うリスクが高いと思われる。厚生労働大臣は労働者派遣法の運用に当たり、「派遣就業が臨時的・一時的なものであることを原則とするとの考え方を考慮する」としているが、労働者の雇用の安定を確保する更なる措置が必要と思われる。
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