中国の独禁法の適用範囲明確化を求める動き
2015/06/18 独禁法対応, 独占禁止法, その他

事案の概要
中国日本商会は、17日、毎年発表している白書の2015年版で、中国政府に対して独占禁止法の適用範囲を明確にすることなどを求める考えを明らかにした。中国日本商会は、1991年中国における外国商工会議所の第1号として中国政府から正式に認可され、日系企業間の交流や日中経済交流の促進を図ること等を目的とした日系企業の団体である。同商会が2015年白書に独占禁止法の適用範囲の明確化を求める考えを記載した背景には、近年、中国における外資系企業に対する多額の罰金支払い命令が多発しているという事情がある。その例をいくつか紹介したい。
主な事例
日系企業が多額の罰金支払い命令を受けた例としては、昨年、自動車部品メーカー10社に対して独占禁止法違反で総額200億円を超える制裁金が命じられた事件が有名である。価格カルテルを結ぶなど業界ぐるみで発電機・ワイヤーハーネス・ベアリングの価格をつりあげる不正行為があったとされた。この事件の制裁金の額は、中国で2008年に独禁法を施行して以来過去最大のものであった。
その後、今年2月には過去最大の制裁金となる1100億円を超える罰金支払いが米半導体大手のクアルコムに対して命じられている。この事件では、スマホ向けの通信技術を巡り、端末メーカーに不当に高い使用料を強いるなどの「市場支配的地位の濫用」(中国独禁法17条1項参照)といわれる違反行為があったと判断されたのだ。
コメント
先に紹介したクアルコム事件での「市場支配的地位の濫用」の禁止を規定している中国独禁法17条(イ)~(カ)は、「正当な理由なく」原価を下回る価格での商品販売や取引相手との取引拒否等を行ってはならないと定めている。この「正当な理由なく」の判断は裁量によるところが大きく、適用の実態は不透明であるといわれている。中国の独禁法は施行からまだ数年しか経っておらず、国内での先例数が不十分なため、今後の適用実態を見守っていくことは必要である。今回、2015年白書が独禁法適用範囲の明確化を求めたことは、低迷している対中事業を盛り上げることに繋がると期待したい。
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