民法債権分野改正で企業も対応が必要
2014/09/03 契約法務, 法改正対応, 民法・商法, 法改正, その他

事案の概要
民法の債権法分野について大幅改正を検討している法制審議会の民法部会は、8月26日法務省が取りまとめた最終案を大筋で了承した。法務省は来年の通常国会での提出を目指している。日常生活の契約ルールに関して約200項目にも及ぶ大改正を行う予定であり、また、債権分野の大改正は民法制定以来120年ぶりとなる。
改正内容
主な改正内容は、①賃貸契約の「敷金」の定義、②企業融資で求められる個人保証の原則禁止、③消滅時効を5年に統一、④「約款」の効力の明確化、⑤法定利率を3%に引き下げた上での変動制の導入、などがある。
法定利率については、8月28日の記事で解説した。そこで、今回は他の改正内容について説明する。
①不動産賃貸借契約の「敷金」の定義
現行では、「敷金」についての規定はない。しかし、現在の不動産賃貸借契約では敷金を差し入れるのが一般的となっている。そこで敷金について、「その名義を問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と新たに定義された。敷金返還に関する紛争を減らすことが目的である。
②企業融資で求められる個人保証の原則禁止
現行では、保証契約を締結する際に特別な条件はない。しかし、中小企業などの保証を個人が行った結果、その保証人が多額の借金を負って破産するなどの問題点が指摘されていた。そこで、企業への融資の際に経営者を除く第三者が保証人となる場合は、公証人による意思確認が必要となった。これにより、安易に保証人となることを防ぐことができると考えられている。
③消滅時効を5年に統一
現在は、業種によって消滅時効の期間が異なっている。これを5年に統一し、消滅時効に関するルールを明確化する。
④「約款」の効力の明確化
「約款」とは
約款とは契約の内容や条件を一律に定めた契約条項をあらかじめ定めておき、その内容で契約を締結する契約条項そのものを指す。保険や銀行取引、鉄道・タクシーなどの運送、ポイントカードなど、大量の取引を行う際に迅速な処理が可能となり、現在では一般的に利用されている。しかし、消費者はそのサービスを利用するためには約款の内容を受諾するしかなく、また、企業が呈示する約款の内容が複雑で多岐にわたることから正しく理解しないまま契約を締結する消費者が多く、その結果として後に多くのトラブルが発生していた。
改正点
現在の民法には約款についての規定がない。そこで、今回の改正では新たに約款について規定を設ける。さらに、変更する場合には一定の場合を除き周知がされなければ変更の効力が生じない旨や、消費者にとって不利益の大きい条項については無効となる旨が定められることになる。約款を消費者にとって利用しやすいものとし、合わせてトラブルや悪徳業者を減らすことを目的としている。これに対して、事業者にとっては規制強化となることから反発が強く、約款の内容については継続審議となった。
コメント
約款が現在多くの場面で利用されている以上、債権法大改正に合わせて約款についても明確な規定を定めることは不要なトラブルの減少につながり、消費者だけでなく企業にとってもメリットがあるといえる。ただ、約款の内容についての見直しの必要性は大きい。一般の消費者との間で締結する契約書であることを念頭に入れて、正確さだけでなく分かりやすさも重視した約款の作成が必要となってくるといえる。
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