【無印良品インド進出】海外進出と人事
2014/09/08 海外法務, 海外進出, 外国法, その他

従来の対応
海外進出して法人を新たに設立する場合、2種類の従業員が以前から存在していた。1つは本社従業員を出向させるもので、「駐在員」と呼ばれる。もう1つは、現地にいる日本人を雇う「現地採用」と呼ばれる。
まず「駐在員」について説明する。海外で法人を設立すれば、その国の法規に服することになる。現地で義務化されている福利厚生、物価を考えると、日本本社との雇用を終了して、現地法人の雇用に切り替えるのが会社のコスト削減に繋がることが多い。もっとも日本には解雇規制が労働契約法16条(元々は判例法理)にあるため、多くの企業は元の会社に従業員を在籍させつつ出向という形をとってきた。出向(労働契約法14条)の場合、従来の給与を維持したまま更に出向手当がつく。さらに海外ということで、この手当は国内転勤・出向の時よりも高額の傾向がある。そこでコスト削減のために、駐在員を減らす傾向にある。例えばベトナムなどの発展途上国の場合、駐在員1~3名で、3~5年で日本に帰国させることが多い。
一方で「現地採用」として現地の日本人を雇う場合、1~5名ほど雇い、10~100名の現地人の管理、簡単な事務を任せることが多い。これは正社員にすると日本の法規により福利厚生で負担が重くなること、現地価格の賃金にすることで支出を抑えたいことが背景にある。現地採用には日本の労働契約法の適用もないため、育てるという観点もそれほど強くない。したがって簡単な事務をまかせ賃金も安く、日系人は期間の定めのある契約となることが多い。
<労働契約法>
第14条 使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。
第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
コメント
もっとも、私は現地採用を見直すべきだと考える。具体的には本社へ向かえ入れる道を作るか、賃金を上げることである。その理由は現地採用従業員こそが、現地人の管理をして現地の実情を捉えているからである。駐在員は数年で日本に帰国することから、現地のニーズ、現地人の気質を把握しきれない。それに対して、現地の日本人は解雇規制のない状況下で仕事を継続しているため、常に解雇と隣あわせであり、自分のスキルを磨き将来を意識している。また現地人と直に接する時間が長い分だけ、現地のニーズ、状況を把握している。このような人材の待遇をよくすることで自社文化とは異質の日系人を取り込むことができ、会社に新たな刺激を与えるのではなかろうか。
関連サイト
この筆者の記事一覧
【無印良品インド進出】海外進出と人事(2014年9月8日)
【発達障害と雇用】会社の対応(2014年9月8日)
【社員がデング熱にかかったら?】(2014年9月22日)
【日立製作所の挑戦】年功序列の歴史と意義(2014年10月7日)
【社員がエボラ熱にかかったら?】(2014年10月20日)
【子供を会社に連れてきていいの?】会社と育児の関係(2014年11月10日)
関連コンテンツ
新着情報

- ニュース
- 福岡地裁が東輪ケミカルに2700万円支払い命令、「配車差別」と不当労働行為2025.4.24
- 労働環境の改善を求めたことにより「配車差別」を受けるようになったのは違法であるとして、東輪ケ...

- 解説動画
江嵜 宗利弁護士
- 【無料】新たなステージに入ったNFTビジネス ~Web3.0の最新動向と法的論点の解説~
- 終了
- 視聴時間1時間15分
- 弁護士
- 片山 優弁護士
- オリンピア法律事務所
- 〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内一丁目17番19号 キリックス丸の内ビル5階

- 業務効率化
- 鈴与の契約書管理 公式資料ダウンロード

- 解説動画
大東 泰雄弁護士
- 【無料】優越的地位の濫用・下請法の最新トピック一挙解説 ~コスト上昇下での価格交渉・インボイス制度対応の留意点~
- 終了
- 視聴時間1時間

- セミナー
登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
- 登島さんとぶっちゃけトーク!法務懇談会 ~第15回~
- 終了
- 2025/04/23
- 19:00~21:00
- 弁護士
- 平田 堅大弁護士
- 弁護士法人かなめ 福岡事務所
- 〒812-0027
福岡県福岡市博多区下川端町10−5 博多麹屋番ビル 401号

- 業務効率化
- LAWGUE公式資料ダウンロード

- まとめ
- 中国:AI生成画像の著作権侵害を認めた初の判決~その概要と文化庁「考え方」との比較~2024.4.3
- 「生成AIにより他人著作物の類似物が生成された場合に著作権侵害が認められるか」。この問題に関し...