育休で昇給なしは違法と高裁が判断
2014/07/22 労務法務, 労働法全般, その他

事案の概要
育児休業取得を理由として昇給させないのは違法として、京都市の男性看護師が勤務先の病院に昇給賃金との差額等の支払を求めた事件の控訴審判決があり、大阪高裁は育児・介護休業法10条に違反するとして約24万円の賠償を命じる判決を言い渡した。
原告の看護師は2010年度に3か月の育児休業を取得した。病院側はこの育児休業を理由として2011年度に職能給を上昇させず、そのため昇格試験を受験する機会も与えなかった。一審京都地裁は昇格試験を受験する機会を与えなかったことは違法だが、昇給させなかったことについては違法でないと判断していた。高裁は一審の判断を変更し、昇給させなかったことについても違法と判断したものである。勤務先病院には3カ月以上の休業があると昇給できないという就業規則があり、この就業規則の規定が違法であるとされた。
コメント
今回の事件では、3カ月以上の休業があると昇給できないとする就業規則の規定が育児・介護休業法10条に違反すると判断された。育児・介護休業法10条は育児休業を理由として労働者に解雇等不利益取扱い(公序良俗違反)をしてはならないと定めている。同条に反するかどうかは、病院の就業規則の規定が育児休業取得の権利を抑制し法の趣旨を実質的に失わせるといえるかどうかで判断される。一審と高裁は、就業規則の規定が育児休業取得の権利を抑制しているかどうかで判断が分かれた。
しかしそうは言っても、一審でも就業規則の規定は同条の趣旨からして望ましいものではないと述べている。高裁で違法との判断がされたことからいっても、3カ月という短期間の休業で昇給ができないというのは、あまりに労働者にとって不利益な規定だといえる。特に給与は労働者にとって重要な利益であり、給与の重要性を重視した結果といえる。
参考資料
下記に一審判決が引用した判例を紹介する。同様の例は以前になく、下記判例はいずれも休暇取得によって賃金等に不利益が生じた例である。
最高裁判所第一小法廷昭和58年(オ)第1542号
平成1年12月14日
前年の出勤率が80%以下の者を賃金引き上げ対象者から除外する旨の規定が公序良俗違反に当たるとされた例。
最高裁判所第二小法廷平成4年(オ)第1078号
平成5年6月25日
年次有給休暇を取得した者に皆勤手当を支給しない旨の規定が公序良俗違反に当たるとされた例。
関連コンテンツ
新着情報

- 解説動画
江嵜 宗利弁護士
- 【無料】新たなステージに入ったNFTビジネス ~Web3.0の最新動向と法的論点の解説~
- 終了
- 視聴時間1時間15分
- セミナー
熊谷 直弥 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所 パートナー/第一東京弁護士会所属)
- 【オンライン】2025年春・Web3/暗号資産の法令改正動向まとめ
- 終了
- 2025/04/23
- 12:00~13:00

- 解説動画
奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
- [アーカイブ]”法務キャリア”の明暗を分ける!5年後に向けて必要なスキル・マインド・経験
- 終了
- 視聴時間1時間27分

- 業務効率化
- Legaledge公式資料ダウンロード
- 弁護士
- 横田 真穂弁護士
- 弁護士法人咲くやこの花法律事務所
- 〒550-0011
大阪府大阪市西区阿波座1丁目6−1 JMFビル西本町01 9階

- まとめ
- 今年秋施行予定、改正景品表示法の概要2024.4.25
- 昨年5月に成立した改正景表法が今年秋に施行される見通しです。確約手続きの導入や罰則規定の拡大...
- 弁護士
- 原内 直哉弁護士
- インテンス法律事務所
- 〒162-0814
東京都新宿区新小川町4番7号アオヤギビル3階

- ニュース
- 建設資材会社が賃金不払いで書類送検、労働法の賃金規定について2025.8.19
- 従業員に9ヶ月分の賃金を支払っていなかったとして、札幌市の建設資材会社とその取締役が札幌区検察...

- 業務効率化
- 鈴与の契約書管理 公式資料ダウンロード