【震災復興】住宅整備を促進、改正復興特区法成立。
2014/04/24   不動産法務, 民法・商法, 住宅・不動産

事案の概要

東日本大震災の被災地で、土地収用を迅速化や、集団住宅整備につき土地収用法が適用できる対象を緩和する内容を盛り込んだ改正復興特区法が23日、参院本会議で可決、成立した。改正によりこれまで滞りがちであった災害公営住宅等の整備が進むことが期待される。

土地収用に関する裁決を得るためには、事業者が収容を行う事業について事業認定手続を経た後に土地調書・物件調書を作成した後県の収用委員会へ裁決を申請する必要がある。特に被災地において災害公営住宅用の高台の土地取得を行うにあたっては、調書を作成する際に土地所有者の所在が不明である場合が多く手続きに時間がかかってしまうという問題が生じていた。

こうした状況を受け、本改正により調書が完成していない段階で、事業を行う国や自治体が収用委員会に裁決を申請できるようになった。また他にも、緊急に施行する必要があり遅延が公共の利益に著しく支障を及ぼすおそれがある事業について、収用委員会が裁決手続きを終える前に6ヵ月に限り土地利用が可能になる土地収用法上の規定を1年に延長する規定や、土地収用事業の認定手続きにかかる期間を短縮する規定も盛り込まれるなど、土地収用の迅速化が意識された改正となっている。

こうした迅速化の規定に加え、本改正では集団住宅整備につき土地収用法が適用できる対象が緩和される規定も定められている。土地収用法が適用されるには対象が収容適格事業でなくてはならないが、東日本大震災復興については復興特区法に定める復興整備事業を都市計画法にのっとり収容適格事業とみなす構造をとっている。そのため従来都市計画法及び土地収用法の規定により50戸以上の集団住宅でなければ収容適格事業とならなかったが、本改正により復興特区法上で5戸以上でも収容が可能になる規定が設けられるようになった。これにより集落規模が小さく、大規模な集合住宅を建設することが難しい場所でも災害公営住宅のための土地収用を円滑に行えるようになる。

コメント

権利者に関する情報が不明瞭で手続が滞るという事態はありがちであるが、これは土地収用においても同じことである。被災地の住民のために一刻も早い仮設住宅に代わる住宅の確保が必要なことはもとより、被災地の経済復興のためにもこうした特需を生み出す復興事業は滞りなく行われて欲しいところである。住宅建設となれば地場の建設企業が多く活躍することとなる。福島県三春村では地元建設関係業者による「三春町に葛尾村の復興公営住宅を創(つく)る建設推進協議会」が発足し、建設した住宅を村が買い取る方式を採用するなど、地元産業と災害公営住宅に関する動きは活性化している。被災地の復興が地元経済と共に滞りなく進むことを願う。

関連条文

土地収用法
第三条  土地を収用し、又は使用することができる公共の利益となる事業は、次の各号のいずれかに該当するものに関する事業でなければならない。
三十  国、地方公共団体、独立行政法人都市再生機構又は地方住宅供給公社が都市計画法 (昭和四十三年法律第百号)第四条第二項 に規定する都市計画区域について同法第二章 の規定により定められた(略)自ら居住するため住宅を必要とする者に対し賃貸し、又は譲渡する目的で行う五十戸以上の一団地の住宅経営

都市計画法
第十一条
第一項 都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる施設を定めることができる。この場合において、特に必要があるときは、当該都市計画区域外においても、これらの施設を定めることができる。
八 一団地の住宅施設(一団地における五十戸以上の集団住宅及びこれらに附帯する通路その他の施設をいう。)

第六十九条  都市計画事業については、これを土地収用法第三条 各号の一に規定する事業に該当するものとみなし、同法 の規定を適用する。

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