EU最高裁、無許可でのハイパーリンクは違法でないと判決
2014/02/18 知財・ライセンス, 著作権法, その他

事案の概要
今月13日、EUの最高裁に当たる欧州司法裁判所(The Court of jusutice of the EU=CJEU)はNils Svensson v.s. Retriever Sverigeの訴訟において著作権により保護されているコンテンツへのはパーリンクは著作権者に無許可で掲示しても、原則として著作権者の権利を侵害せず欧州著作権法(EU copyright rules)に反しない旨の判決を下した。
欧州著作権法(EU copyright rules)では、著作物を公衆に紹介する権利(right to control the communication to the public of their works=日本の著作権法でいうところの公衆送信権)を著作権者は著作物に対して独占している。そのため、通常は著作権者の許可なく著作物を閲覧可能な状態におくなどの行為はかかる法に照らして違法となる。
詳述すると、欧州著作権法(EU copyright rules)では、公衆に送信したというためには「新しい公衆(new public)」に著作物を紹介したということが必要とされる。
しかし、本件で問題となった著作物はインターネット上で既に著作権者によって何らの制約なく公開されていたものであったため、欧州司法裁判所(CJEU)はこれらの著作物へのハイパーリンクを掲示することが「新しい公衆(new public)」への紹介に当たらず、違法にはならないと判示した。
もっとも、同判決は著作権者が著作物を公開している対象が限定されている場合にはハイパーリンクを第三者が不特定多数のサイト閲覧者に対して掲示してしまえば、それは「新しい公衆(new public)」への開示に当たる旨判示している。
その理由を同判決は、著作権者が閲覧・利用の対象者を制限している場合にもハイパーリンクによって不特定多数の第三者に閲覧されるようにすれば、権利者による著作物の利用の許可を得た者でなくとも著作物の閲覧・利用が可能となってしまい、権利者の意思に反することから、権利者が意図しなかった閲覧者としての「新しい公衆(new public)」に当たると解するべき旨述べている。
コメント
本件ではハイパーリンクというインターネット上での他サイトの閲覧を容易にする行為についての著作権法での違法性が問題となった。結論としては、権利者が利用・閲覧を制限していない限り、著作物についてインターネット上で著作物に接続できるハイパーリンクを掲示することには権利者の許可は不要とするものであり、常識に適うものといえる。
日本国内の著作権法においても、ハイパーリンクの使用は著作権法の複製権(同法2条1項15号)および公衆送信権(同公7号の2)との関係で問題になりうる。
しかし、複製権との関係でいえば、ハイパーリンクはあるサーバーの中にある著作物のデータへの繋がりを示すものに過ぎず複製権の侵害とはいえないといえる。公衆送信権についてもハイパーリンクを貼り付けたところで権利者が著作物を設置したサーバーへユーザーを誘導するに過ぎないものであり、リンクを貼り付けた行為者自身が不特定多数のユーザーへの閲覧をさせているわけではないため違法とはいえないといえる。ただし、あくまでも権利者の著作物として紹介しなければならないことはいうまでもない。
このように国内での問題を考えても本件の判決は常識に適うと考えてよい。
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