Google社いじめ動画無罪確定
2014/02/06 海外法務, 海外進出, 外国法, その他
事案の概要
2006年9月、イタリア版Googleの動画サイトに発達障害の子どもがいじめられている動画が投稿された事件について、プライバシー侵害および名誉毀損で刑事告訴されたGoogle幹部はプライバシー侵害について有罪判決となった。
その後、同社が表現の自由に対する侵害として控訴するとともに、そもそも動画をアップロードさせる環境にしていたこと自体が違法であるとの趣旨でプライバシー侵害および名誉毀損についての有罪判決を求めて検察側も控訴した。その結果、控訴審でプライバシー侵害についてもGoogle社幹部側は逆転無罪となった。
そして昨年末、同国最高裁は控訴審判決の判断を支持した。Google社は同社の動画サイトに動画をアップロードしたユーザーのデータを管理する責任はあるが、当該動画内に現れた個人データを加工・処理する責任はなく、個人情報を見て取れる動画を加工・処理する責任は全面的にアップロードするユーザーにあるため、同社には法的責任は生じない旨の高裁判決と同様の判断をしたものである。
最高裁は、Google社は問題となった動画がアップロードされたサイト全体を運営する責任を有するに過ぎず、ユーザーが違法な動画をアップロードしても当該動画の存在を検知しない限り当該動画を削除する責任も生じないとの判断をしたものである。
EU電子商取引法(The EU's E-Commerce Directive)では、サイト運営者は違法なコンテンツがアップロードされても運営者自身が当該コンテンツを作成または検知しない限り、サイト上に残しておくこと自体は法的責任を問わず、違法コンテンツに気付きながら故意に放置した場合にのみ法的責任を問うこととしている。本件の最高裁および控訴審の判断はEU電子商取引法(The EU's E-Commerce Directive)の規定を素直に適用した好例といえる。
コメント
本件の被告人はたまたまGoogle社幹部の面々であったが、グローバルな範囲で利用されるWebサイト管理会社にとっては誰が被告人となってもおかしくはない状況でもあった。
上記のように本件ではEU電子商取引法(The EU's E-Commerce Directive)を素直に解釈・適用する判断が確定したため、有罪判決という衝撃を世界中のWebサイト運営会社に与えた地裁判決の先例性はなくなった。本件のように実定法を明確かつ素直に適用することは極めて常識に適うといえるものの、このような判断が確定したことは少なくともEU域内では強い先例性を発揮するといえ、Webサイト運営会社は地裁判決に脅える必要も完全になくなったものといえる。
同国の国会議員には本件のいじめ動画の投稿をきっかけにWebサイト運営者に免許制を導入すべきなど規制を極めて重くする方向で行動するものもあったため、本件はWebサイト運営会社が投稿されたデータを作成・加工するわけではなくサイト上で公開するのみという基本的な業務実態の常識にも適い、不当にWebサイト管理者の責任を加重させない方向への法的影響力を持つという点でも重要な先例的価値を有する。
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