マレーシアで議論を呼ぶ定年の延長
2013/08/05   海外法務, 海外進出, 民法・商法, その他

事案の概要

 マレーシアで、企業の最低定年を60歳とする法律(The Minimum Retirement Act)が7月1日より施行された。しかし、約300社が、猶予期間の申請を行い、いまだ当該法律の定年年齢を採用するには至っていない。

 上記最低定年法は、2012年に成立し、被雇用者の最低定年を60歳とし、最低定年に達する前に早期退職をさせることはできなくなるとの内容であった。
 もっとも、企業側には、最長で、半年間の猶予期間が与えられることとなっている。政府系企業や、多国籍企業などの有力企業や、中小企業も含め、多くの企業が、猶予期間の申請を行い、2014年1月まで、最低60歳の退職年齢には変更しない見通しである。

 マレーシアでは、公務員に関しては、退職年齢について法的に規定されていたが、民間企業については、明確な規定はなく、各企業の裁量に委ねられていた。
 そのため、多くの企業では、年金の支給開始年齢である55歳を定年としていた。しかし公務員の定年が58歳から60歳に引き上げられたため、民間企業もそれに合わせる形で、退職年齢の引き上げが行われることとなった。

 60歳の最低定年制の導入を巡っては、雇用主側と従業員側との間で、論争が巻き起こっていた。
 従業員側としては、60歳まで雇用が保障されることになるが、企業にとっては、人件費の負担が増えることとなる。さらに、2013年1月1日付けで導入された最低賃金制度の運用いかんによっては、さらなる人件費の増加を招き、経営を圧迫することが懸念されている。
 そうしたことから、非正規雇用の増員にシフトする企業の動きが活発化し、かえって労働者の雇用が不安定になるのではないかとの指摘もある。

 この最低定年法の猶予期間である、来年1月まで、労使間で更なる議論がなされる可能性がある。どういった推移をたどるのか注目する必要がある。

コメント

 定年年齢については、年金の支給年齢とも関係して各国で問題となっている。マレーシアにおいても、平均寿命が伸びている中で、55歳での定年は早すぎると指摘されていた。
 また、マレーシアの年金財政も考慮すると、定年の延長は不可避であると見られていた。

 日本においても、年金支給年齢の引き上げに伴って、高齢者雇用安定法が改正され、希望者全員を65歳まで雇用することが、企業に義務付けられている。 しかし少子高齢化が進む中で、年金財政の悪化が進めば、支給年齢がさらに引き上げられ、それに伴って、更なる定年の延長がなされる可能性がある。その結果として、現役世代の賃金カットや若年者の雇用を奪う結果につながる恐れがある。
 若い世代の年金納付率をあげることが、一番の解決法であると考えるが、年金制度への信頼が揺らいでいる中で、なかなか納付率が向上しないのが現状である。

 マレーシアは、アジアの中でも経済的に発展している国である。そして、上記定年年齢導入に関する状況は、日本のそれに類似している。この国の定年制に関する行方がどうなっていくのか、日本にとっても参考とするところが多くあるかもしれない。

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