台湾の労働法規改正で、過労は減少するか
2013/06/27   海外法務, 海外進出, 外国法, その他

台湾の職業安全衛生法改正の概要

台湾の立法院は、6月18日、職業安全衛生法(Occupational Safety and Health Act)改正案を可決した。本改正案は2012年に行政院によって承認されていた。
これは、労働者を過労や労働災害から保護することを目的として、雇用主にその方策を講じることを義務付ける内容となっている。

台湾では、1974年に同法が制定されて以来、主要な改正は1991年に一度なされるにとどまっていた。しかし、台湾の産業構造も劇的に変化しており、現在の労働状況に対応するために、今回2度目の抜本改正に至った。

本改正の主要なポイントは以下の通りである。

・本法の適用範囲を自営業や一時雇用の労働者も含め、あらゆる労働者に拡大する。

・ 有害な化学物質を扱うなどの高いリスクのある業務については、定期的に安全確認および評価を行い、労働者は、危険な労働環境から移動する権利を有する旨も規定された。

・雇用主は、深夜労働や長時間労働で労働者が過労に陥らないように、対応策を策定し、実行しなければならない。また、定期的な健康診断を実施し、労働者が現在の業務に適応できないと医者から診断された場合には、業務内容を変更したり、労働時間を短縮するなどの措置を講じる必要がある。

今回の改正によって、同法の適用対象となる労働者は、約7百万名から1千万名に拡大されることとなる。

そして労働環境に起因して、労災が引き起こされた場合には、最大で30万台湾ドルの罰金が雇用主に科されることとなった。

本改正においては、女性に対する差別的な規定は削除され、妊婦や18歳以下の労働者に対する健康上の配慮も求められている。

台湾においては、労働基準法上、一日の労働時間は、8時間以内とされ、残業は2週で84時間を超えてはならないとされている。またこれを超過した場合は、時間あたり30%増しで残業代が支払われる旨規定されるなど、労働環境は整っているようにも思われる。

しかし、多くの企業では、この規定がまともに適用されることはなく、超過労働は暗黙の了解となっているとの指摘もある。
あるアンケートによると回答者のうち、残業をしたことがないと答えたサラリーマンは9%に過ぎないとの結果もある。また57%の人が残業代等の措置がないと答えている。
日本でも同様であるが、雇用が確保されることが最優先であり、労働時間も含めて、自身の労働環境に関してはあまり大きな声を上げられないというのが実情のようである。

本改正によって、労働環境の劇的な改善とはいかないまでも、労働者の健康保護の一助になることは期待される。

参考資料

台湾の労働安全衛生統計

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