漫画の自炊代行業者を逮捕。
2013/05/02 知財・ライセンス, 著作権法, その他

事案の概要
漫画などを不正に複製して電子データを販売したとして、長崎県警は1日、著作権法違反(譲渡権侵害)容疑で書籍の電子化代行業、藤野真容疑者(25)=神奈川県座間市相模が丘=を逮捕した。藤野容疑者は、顧客から預かった書籍をスキャナーで読み取って電子書籍化する、いわゆる「自炊」の代行業者だが、顧客から漫画を受け取らずに、所有していた電子データを販売したとみられる。同容疑者は、漫画「銀魂」1〜45巻などを作者の許可なく電子データ化し、1月22日自身が運営するサイトを通じて注文した東京都の40代の男性会社員に代金1万円で販売した疑いが持たれている。
解説
【自炊】
自己が所有する書籍をスキャナー等で電子データ化すること。また、書籍の所有者から依頼を受けて所有者に代わって書籍を裁断・電子データ化することを自炊代行という。
書籍の電子化の際、データを「自ら吸い込む」ことから「自炊」と呼ばれるようになったとされている。
【著作権法(自炊について)】
著作権法21条は,「著作者は,その著作物を複製する権利を専有する。」と規定し複製は原則として著作者のみが行えることになっている。
もっとも著作権法30条は,「著作権の目的となっている著作物は,個人的に・・・使用することを目的とするときは,その使用する者が複製できる。」と規定し、使用者による私的利用目的の複製を認めている。30条によれば「使用する者」が複製する必要がある。
この点自炊代行業者は「使用する者」のいわば手足であるから自炊代行業者による複製もなお「使用する者」による複製といえるとするのが、自炊代行業者側の主張である。
これに対し著作権者は、自炊代行業者は独立した事業者として多くの人達から料金を取ってデジタル化を業として行っているのだから、デジタル化という複製の主体であり、委託した者の「手足」とは認められない、と主張していくことになる。
【著作権法(譲渡権侵害について)】
譲渡権とは、著作物を原作品またはその複製物の譲渡により公衆に提供する権利をいう(著作権法26条の2)。
これを侵害すると著作権法119条で罰せられる。
コメント
今回は自炊代行業者が、いわゆる自炊行為を行ったわけではなく、著作権者に無断で著作物を複製し、販売・譲渡したといえる事案であり、著作権法26条の2の譲渡権侵害により逮捕されるに至っている。
自炊代行業はグレーゾーンだと言われており、今後の司法判断に委ねられているが、悪質性の高いもの、例えばスキャン機材だけでなく書籍までも業者が提供してユーザーが店舗にてスキャンしデータを持ち帰るといった態様ものについてなどは積極的に取り締まっていく必要があるのではなかろうか。
参考資料
【著作権法】
第21条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
第26条の2 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。以下この条において同じ。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において同じ。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。
第30条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる
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