「告発後解雇は違法」大王製紙元課長
2013/03/21 労務法務, 労働法全般, メーカー

事案の概要
大王製紙の会計処理の問題を内部告発した後、懲戒解雇された同社元課長の男性(50)が19日、「解雇には理由がなく、違法」として、解雇無効と、同社に330万円の損害賠償などを求める訴訟を東京地裁に起こした。
訴状によると、男性は同社経営企画部の課長だった昨年12月、タイの現地法人での法令違反などを内容とする告発文書を金融庁や東京証券取引所に送付した。その後大王側から今年2月、「会社の秘密を漏らした」として課長職を解かれた上、北海道にある関連会社の事業所への出向を命じられた。男性が拒否すると、今月11日付で懲戒解雇されたという。
訴状では、「公益通報者として保護されるべきで、降格から解雇までの一連の処分は人事権を乱用した違法行為だ」と主張している。
大王製紙は「訴状が届いておらず、コメントは差し控えたい」としている。
公益通報者保護法による保護について
「保護要件」を満たして「公益通報」した労働者(公益通報者)に対しては、公益通報をしたことを理由とする解雇の無効・その他不利益な取扱いが禁止される
【公益通報とは】
労働者(公務員を含む。)が、不正の目的でなく、労務提供先等について「通報対象事実」が生じ又は生じようとする旨を、通報先に通報すること
【保護要件】
①事業者内部(内部通報)についての要件
・通報対象事実が生じ、又は生じようとしていると思料する場合
②通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関についての要件
・通報対象事実が生じ、又は生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合(*)
③事業者外部(通報対象事実の発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者)についての要件
・上記(*)及び一定の要件(内部通報では証拠隠滅のおそれがあること、内部通報後20日以内に調査を行う旨の通知がないこと、人の生命・身体への危害が発生する急迫した危険があること等)
【通報対象事実とは】
① 国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律として別表に掲げるものに規定する罪の犯罪行為の事実
② 別表に掲げる法律の規定に基づく処分に違反することが①の事実となる場合における当該処分の理由とされている事実等
(別表)刑法、食品衛生法、金融商品取引法、JAS法、大気汚染防止法、廃棄物処理法、個人情報保護法、その他政令で定める法律(独占禁止法、道路運送車両法等)
コメント
公益通報者保護法を一言で言うなら、法に抵触する行為を告発した労働者を解雇や不利益な扱いから保護する制度である。法に抵触する行為であるから、当事者に罪悪感があるのが通常であるが、それを当然のように指摘・是正できないところに組織社会の難しさが垣間見える。権力に屈せず勇気ある行動にでた者には、手厚い保護が期待される。
参考資料
【公益通報者保護法】
e-gov
【公益通報者保護法の概要】
消費者庁ホームページ(PDF)
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