TPP反対集会不参加を理由とする解雇は無効
2013/03/07 労務法務, 労働法全般, その他
事案の概要
医療法人徳洲会が経営する徳之島徳洲会病院を解雇された元事務局長の男性(66)が、解雇は不当で無効として賃金や退職金など計約920万円を支払うよう求めた訴訟の判決が5日、東京地裁であり、西村康一郎裁判官は解雇を無効と認め、計約850万円の支払いを徳洲会に命じた。
徳洲会側は、男性が「出張ばかりで病院業務を一切していない」など病院業務を行わず職責を果たしていなかったと主張。一方男性側は、徳田虎雄・徳洲会理事長の息子の徳田毅衆院議員が中心となって開催した環太平洋連携協定(TPP)反対集会に参加しなかったため解雇されたと訴えていた。
判決は解雇前、元事務局長が徳洲会関係者から集会に欠席したことを非難されていた経緯などから、「毅氏の意向に従わず、反対集会に参加しなかったことが解雇の真の動機だと推認でき」解雇は「合理性を欠いている」として、徳洲会側の主張を退けた。
解雇とは
解雇とは、使用者の一方的な意思表示による労働契約の解約を言う。
解雇は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効と」(労働契約法第16条)とされる。
解雇には以下の3種類がある。
①普通解雇
普通解雇とは、懲戒解雇や整理解雇以外の、労使間の信頼関係破綻を理由とする解雇。それゆえ厳密に言えば普通解雇には必ずしも就業規則違反は必要ないが、就業規則がないと解雇の正当性の立証が困難となるため事実上必要といえる。
②整理解雇
倒産回避など使用者の経営上の理由に基づく解雇
③懲戒解雇
労働者が、就業規則に定められた懲戒事項に該当する職場秩序違反行為を行った場合になされる解雇。普通解雇の場合は30日前に予告するか平均賃金の30日分の予告手当を支払わなければならないが、懲戒解雇は即時に解雇するのが通常(労働基準法20条)。また退職金を全額不支給にしたり、減額支給することもある。懲戒解雇事由は限定列挙、普通解雇は例示列挙と解されている。
コメント
今回の裁判は法律論ではなく、事実認定が問題となったといえる。解雇した実質的理由が職責を果たしていないことにあるのか、それとも政治的集会に参加しなかったことにあるのかである。解雇理由が政治的集会に参加しなかったからであれば、解雇が不当なのは言うまでもないことである。義理付き合いというものもあろうが、それであれば個人の判断にまかせるべきであり、権力をかざして強制することではなかったといえよう。
参照条文
労働契約法
16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
労働基準法
第20条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくともとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる。
関連コンテンツ
新着情報
- まとめ
- 経済安全保障法務:中国の改正国家秘密保護法の概要2024.3.15
- 2024年2月27日, 中国では国家秘密保護法(原文:中华人民共和国保守国家秘密法)の改正が成...
- 業務効率化
- LAWGUE公式資料ダウンロード
- 弁護士
- 松本 健大弁護士
- NEW
- オリンピア法律事務所
- 〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内一丁目17番19号 キリックス丸の内ビル5階
- セミナー
- 田代 洋介弁護士
- 【リアル】知財コンプライアンス入門 -法務担当者向け 法務基礎シリーズ-
- NEW
- 2024/06/06
- 15:30~17:00
- 弁護士
- 中島 星弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号
- 業務効率化
- LegalForceキャビネ公式資料ダウンロード
- 解説動画
- 大東 泰雄弁護士
- 【無料】優越的地位の濫用・下請法の最新トピック一挙解説 ~コスト上昇下での価格交渉・インボイス制度対応の留意点~
- 終了
- 視聴時間1時間
- ニュース
- 金融庁にルール変更の動き、「真の株主」把握しやすく2024.4.19
- NEW
- 金融庁は株主名簿に載らないが、株主総会で議決権を持つ実質的な株主を企業が把握しやすくするよう...
- 解説動画
- 奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
- 登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
- 潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
- [アーカイブ]”法務キャリア”の明暗を分ける!5年後に向けて必要なスキル・マインド・経験
- 終了
- 視聴時間1時間27分