海外発電事業への参入と法務のニーズ
2012/11/30 海外法務, 海外進出, 外国法, 商社
事案の概要
三菱商事は「ヘネル社」(南米チリ第2位の電力会社)と組み発電事業に参画する。
電気を大量に使う銅鉱山の集積地に石炭火力発電所を共同で建設、2016年初めに稼動させる。
日米企業が南米の発電事業に参入するのは初めてである。
事業主体となる「ヘネル社」全額出資の特別目的会社に三菱商事が40パーセントを出資する。
出資額は150億円超となる見込みである。総投資額は1100億円で、過半をプロジェクトファイナンスで賄う計画である。
発電した電気は全量をチリ北部に集積する銅鉱山会社に売電する。すでに2つの鉱山会社と20年間弱に渡って合計36万キロワットを供給する売電契約を締結した。
三菱商事は参入を機にチリ規制や法制度に合わせた運営ノウハウを蓄積する。
コメント
今回の火力発電の海外進出を初め、日本の発電事業の海外展開は大きく変わってきそうである。これには、福島第一原発事故をきっかけとして従来の発電事業計画(原発を主眼としたもの)を大きく変更せざるを得なくなったことが大きく関係している。
そのため、最近では原発に代わる発電の一つとして地熱発電が日本では注目されている。
日本は世界の中でも温泉資源が豊富な国でありながら、地熱発電が少ない。理由のひとつとしては、源泉のある場所の多くが国立公園に指定され、開発に不向きであったことにあった。
しかし、同事故後状況が変わり、規制が緩和されつつある。新しい法制度に合わせた地熱発電事業の運営ノウハウを蓄積するニーズは今後国内で多くなりそうである。
まさに企業の法務担当が新規発電事業の要になってくることだろう。
さらに、源泉が豊富な海外(ケニアなど)での地熱発電事業も期待される。地熱発電プラントの日本の世界シェアは70%強に達するとされる。地熱に組み合わせるヒートポンプも、日本勢は他国の追随を許さない強さをもつ。
このような高い技術力を活かすためにも、企業法務担当を育成し海外の法制度に合せた運営ノウハウを蓄積することが今後重要になってくるだろう。
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