検察、原発事故の刑事責任を問う告訴・告発を受理
2012/08/03 訴訟対応, 刑事法, その他
概要
東京電力福島第一原子力発電所の事故をめぐり、当時の政府担当者や東京電力の幹部ついて、業務上過失致死傷罪の疑いがあるとして、以前より複数の市民グループから、福島や東京などの検察庁に告発状が提出されていた。さらに今年6月、福島県の住民など1300人余から、福島地方検察庁に告訴状が提出された。
これまで検察庁は、事故調査への影響を考えて、受理を留保していた。
検察庁は、先月23日に政府の事故調査・検証委員会の報告が提出されたことを受け、今月1日付でこれら告訴・告発を受理。検察当局により、原発事故の刑事責任をめぐって捜査が開始されることになった。
コメント
福島代原子力発電所の事故をめぐっては、すでに民事責任を追及する訴訟が住民や株主から東京電力に対して提起されていたが、刑事責任をめぐる検察の動きとしては今回が初めて。今後、検察は業務上過失致死傷罪での立件の可否を含めて、本格的に捜査を開始することになるだろう。
もっとも、業務上過失致死罪が成立するためには、①結果について予想ができること、②結果を回避しなければならないのに不注意によりこれをしなかったこと、③結果と過失との因果関係が必要になる。今回の事故では、こうした要件をみたすかどうか判断するためには、事故原因や事故発生に至るメカニズムを特定することが不可欠である。
今回の事故では、自然災害をきっかけとするものである他、原因や発生に至るメカニズムについて各事故調査委員会の見解も分かれており、これらを特定することは困難という見方が多い。政府関係者や企業の幹部個人の刑事責任をするにあたって、ハードルは高いと見られている。
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