ゼロから始める企業法務(第1回)/ノウハウとツールを得ることの重要性
2021/11/01   法務部組織

初めまして!堀切と申します。
これから企業法務を目指す皆様、念願かなって企業法務として新たな一歩を踏み出す皆様に、少しでもお役に立てるような情報を提供できればと思い、記事を執筆するに至りました。

自己紹介


まずは、私の自己紹介をさせていただければと思います。

私は、新卒で通信機材(ビジネスホン、通信ケーブル、パッチパネル等)の専門商社に入社し、7 年間営業に従事しました。いわゆる法人相手のルート営業でして、担当する販売店、工事店等の法人顧客に定期的に伺い、いただいた問い合わせに対してカタログ等で適切な機材を選んで用意し、難しい案件があればメーカーの担当者が同行のうえ打ち合わせをし、まとまった案件があればメーカーに交渉もしたうえで値引きを行い、受注できれば納期どおりに品物を収める、という一般的なビジネススタイルです。

その様な仕事をしながら、キャリアアップを目指し、宅建、行政書士と資格取得に励みました。最終的には、司法書士の資格取得を目指し、取るには至らなかったのですが、今まで勉強した法律の知識を生かした仕事に就きたいと思い、司法書士事務所を経て、※運よくJASDAQ 上場 IT ベンチャーでの法務の仕事に就くことができました。
※前任者の退職によるリプレイスという、幸運があった為です。以上のとおりで、経験ゼロのまま上場企業の法務となった初日の引継ぎでの会話は、こんなザマでした。

 

 

前任者:当社の契約書の雛形のうちまずは NDA の内容を説明します。


堀切:すみません、NDA って何ですか?


前任者:?? Non-disclosure agreement 秘密保持契約のことです(この人 NDA も知らないのか。大丈夫か?)。


 
 

一事が万事この調子ですし、前任者も早々に退職され、一人法務として未経験の業種、未経験の職種という世界に放り出された私は、法務の経験、知識、技術を積み上げるのに、人一倍苦労しました。この様な私の経験から得たものを記事にすることで、少しでも皆様のお役に立てればと思っております。

 

総論:私にとって法務とは


皆様は、法務という職種にどの様なイメージを持っていますでしょうか。

・法律という専門知識を用いて課題を解決する専門職
・企業が違法な活動を起こさない様ブレーキを掛ける立場
・コンプライアンス体制の構築が重要な任務
・訴訟や不祥事の際に企業を守る最後の砦
・知財や会社法の知識を用いて特許戦略や資本政策等の戦略法務を遂行する役割


ざっとこんなところでしょうか?

もちろんその通りですし、時には高度な法的判断を求められる場面もあるのですが、私は、基本的な法務のビジネススタイルは、営業をしていた時と何ら変わらないと思っています。

営業時代の、私のビジネススタイルに照らし合わせると、こんな感じです。

 

 

・担当する販売店、工事店等の法人顧客に定期的に伺い


→事業部や財務経理等、複数部署のキーパーソンと密にコミュケーションを取り


 

・いただいた問い合わせに対してカタログ等で適切な機材を選んで用意し、


→契約に関する相談や法務相談に対して条文や専門書等の文献を調査したうえで適切に回答し


 

・難しい案件があればメーカーの担当者が同行のうえ打ち合わせをし


→法的判断が難しい案件は弁護士等の専門家の指導を得たうえで妥当な結論を用意し


 

・まとまった案件があればメーカーに交渉もしたうえで値引きを行い、


→株主総会や M&A 等の費用が掛かる案件は、こちらの費用感を伝えたうえで専門家から妥当な見積もりを得て


 

・受注できれば納期どおりに品物を収める


→株主総会、取締役会での機関決定を取り、法定期限内に登記等の申請を行う


※上場企業であれば、適時開示を適切に行える様、IR 担当者と連携を取る


 
 

いかがでしょうか。確かに法務は専門職ですが、本質は「法的な知識や技術を持っているビジネスパーソンの一人」に過ぎないと言えます。私の営業時代と比較すると「製品、材料のカタログが、六法や法律の専門書に変わっただけ」とも言えます。恐れるに足りず、です。

・・とは言ってみたものの、前述のとおり、私は法務の経験、知識、技術がゼロの状態から積み上げていくのに、人一倍苦労しました。思い返すと、一人法務であったため、例えば契約書1つを取ってみても、

➊ノウハウがない
→契約書を読む際にどこが勘所になるのか、全く分からない。そもそも契約書を今までちゃんと読んだことが無い。覚書や個別契約についても、どの様な立付で存在するのか理解できていない。

➋ツールがない
→雛形以外の契約書の作成を求められても、そもそも契約書をゼロから作ったことが無いので、対応することができない。

そして、上2つについて、誰にも聞くことができない状況であったからだと思います。

 

私が置かれたこの状況は、決して特別なものではありません。法務は財務経理や人事総務と同じコストセンターなので、経営側としては最小限の人数で結果を出して欲しいと考えます。多くの企業で法務専任者はおらず、いても1人~3人。4、5人いると多い印象を受けます。皆様の法務パーソンとしての始まりが1人法務である可能性も、大いにあるわけです。

ではどうするか。逆に言えば、「ノウハウ」と「ツール」さえ分かれば、皆様は法務パーソンとして上々のスタートダッシュを切れるわけです。私みたいな目にあうことはありません。

次回からは、各論として「契約」や「株主総会、取締役会事務」等、個別の業務を題材に、皆様がどの様に、実務に使える「ノウハウ」と「ツール」を得ることができるかを、記事にできればと思います。

 

 

 

==========

本コラムは著者の経験にもとづく私見を含むものです。本コラム内容を業務判断のために使用し発生する一切の損害等については責任を追いかねます。事業課題をご検討の際は、自己責任の下、業務内容に則して適宜弁護士のアドバイスを仰ぐなどしてご対応ください。

 

【筆者プロフィール】
堀切 一成


私立市川中学校・高等学校、専修大学法学部法律学科卒業


通信機器・材料の専門商社で営業に 7 年間従事した後、渉外司法書士事務所勤務を経て法務パーソンに転身。


JASDAQ 上場 IT ベンチャーでの法務マネジャー、東証一部上場インターネット広告会社での法務マネジャー・経営企画、スマホゲーム開発会社での法務マネジャーに従事した後、現在は MaaS サービス提供ベンチャー初の法務専任者として日々起こる法務マターに取り組んでいます。


 

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