2026年1月から施行、改正下請法について
2025/10/22   契約法務, コンプライアンス, 下請法

はじめに

下請法の改正法が今年5月23日に公布され、来年2026年1月1日に施行される予定となっています。正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。

今回は改正下請法の概要について見ていきます。

 

改正の経緯

近年の急激な労務、原材料費、エネルギーコストの上昇を受けて、発注者・受注者の対等な関係に基づきサプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させる「構造的な価格転嫁」の実現を図ることが重要であるとされています。

これを実現するため、改正下請法では、協議を適切に行わない代金額の決定の禁止、手形による代金の支払等の禁止、規制及び振興の対象となる取引への運送委託の追加等の措置を講ずるとともに、他段階の取引当事者が連携した取り組み等を支援し、価格転嫁・取引適正化を徹底していくとされています。

以下が、新たに生まれ変わった下請法である「中小受託取引適正化法(通称:取適法)」の概要です。

 

規制の見直し

今回の法改正ではいくつか規制の見直しがなされています。まず、規制内容の追加として、(1)協議を適切に行わない代金額の決定の禁止と、(2)手形払等の禁止が盛り込まれました。下請法ではこれまでも受領拒否や支払遅延、減額、返品、買いたたきなどが規制されていましたが、さらにこれら2つが追加されます。

次に規制対象の追加として、(3)運送委託の対象取引への追加がなされます。規制対象として製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託に加え、運送委託も対象に追加されるということです。さらにこれまでは、親事業者と下請事業者は互いの資本金額で決まっていましたが、従業員数も基準として追加されます。具体的には従業員300人超の委託事業者が、300人以下の中小受託事業者に委託する場合などです。

そして、執行面での強化として、関係行政機関による指導および助言に係る規定、相互情報提供に係る規定も新設されます。

 

振興の充実

下請法と同時に下請中小企業振興法も一部改正されます。軽く触れておきますと、下請中小企業の振興として、多段階の取引からなるサプライチェーンにおいて、2以上の取引段階にある事業者が作成する振興事業計画に対し、承認・支援できる旨が追加されます。

また、製造、販売等の目的物の引き渡しに必要な運送の委託を対象取引に追加、そして法人同士においても従業員数の大小関係がある場合も対象に追加されます。

さらに、国や地方公共団体が連携し、全国各地の事業者の振興に向けた取組を講じる旨の責務と関係者が情報交換など密接な連携に努める旨が規定されます。

 

用語の見直し

今回の下請法改正で関連用語も見直されています。まず、法律名である「下請代金支払遅延等防止法」が「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」となります。

推奨される略称が「中小受託取引適正化法」とされており、通称として「取適法」が提示されています。施行後は一般的に「取適法」と呼称されるようになるものと予想されます。

そして、「下請事業者」が「中小受託事業者」に、「親事業者」が「委託事業者」に改められます。

 

コメント

近年、原材料費や人件費の高騰などにより、それらのコストの適切な転嫁がなされず、立場の弱い下請事業者にその負担を強いている例が急増しているとされます。また、働き方の多様化により、個人事業主として業務委託を受ける形で働く労働者も急増しており、そのような個人事業主の保護の必要性も指摘されています。

今回の改正の一番のポイントとして、下請法が適用されるための基準を資本金ベースに加え、従業員の数も加えられた点が挙げられます。これにより、資本金を1000万円未満としている親事業者も対象となり、個人事業主を利用する場合の多くが適用対象となります。

また、下請代金の支払を手形で行うことも禁止となります。さらに、電子記録債権やファクタリングを使用する場合も、支払期日までに現金を得ることが困難な場合も違法となるとされています。

これらを踏まえて、特に資本金が1000万円未満で業務委託をしている会社は改正下請法に抵触しないか、今一度見直しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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