飲食店に約5万円分いたずら注文の男ら、偽計業務妨害容疑で逮捕
2023/06/19   消費者取引関連法務, 刑事法, 外食

はじめに


飲食店に食事の予約を大量に行ったにも関わらず、その後来店しなかったとして、男らが逮捕されました。逮捕されたのは、広島県に住む男ら2人です。報道などによりますと、2人は共謀のうえ、4月9日、広島県尾道市にある飲食店2店舗に対して、それぞれ、海老ヒレカツ定食16人前(販売価格およそ3万円)と、アラビアータパスタなど17点(販売価格およそ1万6000円)の食事を注文。

「今から食べに行きます」と伝えられたため、店側は待っていたものの、結局来店しなかったということです。そのため、いずれの店も被害届を提出。広島県警尾道署は捜査を行ない、「携帯電話機を使用して、虚偽の飲食物製造の注文をするなどし、各店舗従業員らに注文品を製造等させ、各店舗の業務を妨害した」として、今月15日に偽計業務妨害容疑で逮捕しました。

警察の調べに対して、容疑者の一人は容疑を認めていますが、もう一名は「知りません」などと否認しているということです。

 

不正注文の類型


近年、コロナ禍のオンライン取引市場の活性化の影響もあり、不正注文が増加していると言われています。不正注文は主に、(1)なりすまし注文と(2)いたずら注文に大別されます。

(1)なりすまし注文
なりすまし注文は、実在する他人の氏名・住所・連絡先を不正に利用して注文を行い、その人物宛に商品・サービスを届けさせる犯罪類型です。

例えば、宅配ピザや出前の寿司などを、後払い決済で、実在する第三者に大人数分届けさせるケースなどが挙げられます。なりすまされた側は、基本的に商品の受け取りを拒否するため、店側は商品代金を受け取れず、配送コストなども回収できないことになります。

2015年には、知人男性の名前でみかん10箱を虚偽注文し、業者にミカンを配達させた男が偽計業務妨害容疑で逮捕されています。男は「知人男性への嫌がらせ目的だった」と話していたということです。

(2)いたずら注文
一方、いたずら注文は、実在しない架空の氏名・住所・連絡先を利用して注文を行い、事業者側に商品・サービスを発送させ、損害を与える犯罪類型です。今回の事件もこの類型に分類されます。

 

こうした不正注文は、他人や店側への嫌がらせを目的として行われるケースもありますが、EC事業者が利用しているアフィリエイターが報酬を不正に得るために行うケースもみられるということです。

アフィリエイトは「成果報酬型広告」と呼ばれるインターネット広告のひとつです。 自身が運営するサイトやブログなどで掲載する商品広告を介して売上が発生した場合に、その売上の一部を報酬として受け取れるという仕組みです。そのため、報酬を不正に吊り上げる目的で不正注文を行うケースがみられるといいます。
アフィリエイター企業としては、こうしたアフィリエイト申請者に対して事前審査を行ったり、報酬が発生条件を見直すなどして、悪質なアフィリエイターを排除していくことが重要と言われています。

 

対策は?


不正注文が行われた場合、精神的ダメージはもとより、その注文数によっては、経済的な被害も看過できないものとなります。不正注文を予防するためには、以下の対策が有効といわれています。

(1)高額注文の際の身元確認の厳格化
高額な注文が入った際、電話やメールで連絡を取り、連絡が取れないまたは本人確認ができない場合は、注文をキャンセルする。

(2)警告・ペナルティの明示
不正注文を行っても本人確認ができない場合は注文がキャンセルとなる旨や、不正注文はすべて警察へ被害届を提出する旨、容赦なく損害賠償を行う旨などを、注文者の目につくところに明示する。


また、被害届を提出するにあたり、注文者の個人情報やIPアドレスを警察に提供するケースがあります。あらかじめ、その旨の了承を得ておくことも重要になります。

 

コメント


被害額と被害届提出の労力が見合わないとして、泣き寝入りしている事業者も少なくないと言われる不正注文。その被害は、飲食店やECサイト登録事業者にとどまらず、アフィリエイト広告を利用する幅広い業態にまで及んでいます。

さらに、不正注文の背後には、他人のクレジットカードやアカウント(ログインID・パスワード)の不正利用、空き室住所・海外転送サービスの悪用など、組織的な犯罪が関連しているケースもあります。

法務としても、利用規約・契約書の見直しや不正注文発生時のフローの整備など、十分な対策を講じることが重要になります。

 

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