営業車等を持つ企業におけるアルコールチェックまとめ
2022/11/18 コンプライアンス, 刑事法

はじめに
今年(2022年)4月1日、改正道路交通法施行規則が施行され、白ナンバー車もアルコール検知器によるチェックが義務化されました。
トラックやタクシーでのアルコールチェックは既に義務化され広く実施されてきましたが、白ナンバー車の営業車を保有する企業や、配達を行う事業者では少なかったのではないでしょうか。
年末年始は忘年会、新年会を行う企業も多く、飲酒の機会も増加します。
勤務中に飲酒し事故を起こすと企業側はさまざまな対応を求められます。何より、尊い人命を奪うことになりかねません。
そうした事態を避けるため、改正法でどういった項目が追加されたのかなどを改めておさらいします。
白ナンバー車とは
日本では道路運送車両法で自動車登録番号票(ナンバープレート)の色などが定められています。
その中で「白ナンバー」は、一般的に白地に緑文字のプレートを指し、自家用車や営業車として普段利用される普通・小型自動車、または大型特殊自動車に付けられることが多いナンバープレートです。
こうしたナンバープレートがついた車を規定数以上所有していると、アルコールチェックの対象となります。
なお、タクシーなどの緑ナンバー車(緑のプレート、白文字)は既にアルコールチェックが義務化されています。普通・中型・大型自動車などに人を乗せて、営業運転する車輌に使用されています。
改正法での変更点
2022年4月から順次施行されている改正法では、次のような内容が追加されました。
① 安全運転管理者に対し、目視等により運転者の酒気帯びの有無の確認を行うこと及びその内容を記録して1年間保存することを義務付ける規定
(令和4年4月1日から施行)
② 安全運転管理者に対し、アルコール検知器を用いて運転者の酒気帯びの有無の確認を行うこと並びにその内容を記録して1年間保存すること及びアルコール検知器を常時有効に保持することを義務付ける規定
(令和4年10月1日から施行)
ただし、②のアルコール検知器の規定については、当分の間適応を延期しています。背景にはアルコール検知器の供給が追い付かないなどがあり、時期が分かり次第、警察庁から発表があるということです。
安全運転管理者を選定する必要がある事業者として次のように定められています。
「乗用定員数が11人以上の自動車1台以上」または「自動車5台以上」を使用する事業者は「安全運転管理者」を選定する必要があり、選任をした15日以内に警察署に届け出を行う必要があります。
届出はオンラインでも可能だということです。
社用車ではなく、従業員の自家用車を業務で使用している場合も、対象となる可能性があるということです。事業所の指示で普段の業務で従業員の自家用車を5台以上使用する場合には対象となりうると考えられます。
安全運転管理者とは
主な業務
○ 運転者の状況把握
○ 安全運転確保のための運行計画の作成
○ 長距離、夜間運転時の交代要員の配置
○ 異常気象時等の安全確保の措置
○ 点呼等による過労、病気その他正常な運転をすることができないおそれの有無の確認 と必要な指示
○ 運転者の酒気帯びの有無の確認
○ 酒気帯びの有無の確認内容の記録・保存
○ 運転日誌の備え付けと記録
○ 運転者に対する安全運転指導
安全運転管理者が実施する確認事項(1年間保存)
① 確認者氏名
② 運転者
③ 運転者の業務に係る自動車の自動車登録番号または識別できる記号、番号など
④ 確認の日時
⑤ 確認の方法(対面でない場合は具体的方法)
⑥ 酒気帯びの有無
⑦ 指示事項
⑧ その他必要な事項
⑨アルコール検知器を用いたアルコールチェック※
⑨はアルコール検知器の準備が整い次第、実施となります。
安全運転管理者の選任義務を怠ると違反とみなされ罰則が与えられる場合があります。
改正前は5万円以下の罰金でしたが、50万円以下の罰金に引き上げられています。(令和4年10月1日から施行)
飲酒運転で経営破綻も
仮に飲酒運転を起こした場合、行政処分は非常に重く、企業にとっては大打撃となる恐れがあります。
飲酒運転を起こすと、初違反で100日車、再違反で200日車の車両停止処分がドライバーに下されます。
さらに、事業者にもペナルティが課せられます。
・事業者が飲酒運転を容認した場合 14日間の事業停止
・飲酒運転を伴う重大事故を起こし、事業者が飲酒運転に係る指導監督義務違反の場合 7日間の事業停止
・事業者が飲酒運転に係る指導監督義務違反の場合 3日間の事業停止
会社の機能がストップする可能性があるだけでなく、社会的信用にも関わってくるため、経営破綻する可能性もあるということです。
コメント
今回の法改正で就業規則の変更を行った企業も多いのではないでしょうか。
変更を行った企業では、改めて従業員へ周知を行うことが望ましいでしょう。また、今回の法改正の適用対象とならない企業においても、年末に向けて従業員に飲酒についての意識を高めてもらう取り組みを行うのも良いかもしれません。
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