【法務NAVIまとめ】日本型クラスアクション(消費者の企業に対する集団訴訟の提起)について
2016/06/23   消費者取引関連法務, 消費者契約法, その他

今年の6月17日、自動車の燃費偽装が問題となった三菱自動車が、燃費偽装の対象となった自動車の所有者に対して、一律10万円の補償金を支払うことを表明しました。
しかし、顧客・消費者にとって、自動車という高い買い物に対する不正行為の代償が、10万円にとどまってしまうことに早速不満が出ている模様です。
また、上記のような企業の対策も相手側である消費者がこれに同意しなければ成立しません。
そうすると、三菱自動車の上記対策に対して納得しない消費者が集まり、企業に対して集団訴訟を提起するリスクが発生します。
そこで、今回は日本型集団訴訟について検討していきます。

燃費偽装問題に関連して三菱自動車が対象自動車の所有者に対して一律10万円の補償金の支払を表明。

三菱自動車が一律10万円の補償金支払表明

(出典/東京新聞)

集団訴訟(クラスアクション)とは?

集団訴訟の定義

 (出典/アサミ経営法律事務所)

日本型集団訴訟類似事例

カネボウ株式会社が製造・販売した製品のうち、医薬部外品有効成分「ロドデノール」の配合された製品を使用した消費者にうち、

肌がまだらに白くなる白斑様症状が発生し、白斑被害を受けた消費者がカネボウに対して集団訴訟を提起しました。

弊社が製造・販売した医薬部外品有効成分「ロドデノール」の配合された美白製品をお使いのお客さまに肌がまだらに白くなる白斑様症状が確認されたことを受け、2013年7月4日に自主回収を公表、当該製品の回収に努めてまいりました。

カネボウ集団訴訟

カネボウ集団訴訟

(出典/カネボウ美白化粧品白斑被害救済東京弁護団HP)

ベネッセ集団訴訟

株式会社ベネッセホールディングスの完全子会社である株式会社ベネッセコーポレーションから

最大で2070万件の顧客情報が流出した大規模情報漏えい事件に対して、情報が流出した地域の住民が

集団訴訟を提起した事案です。

ベネッセ集団訴訟

(出典/ベネッセ個人情報漏洩事件 被害者の会HP)

朝日新聞集団訴訟

朝日新聞が,朝鮮人女性を「強制連行」し「従軍慰安婦」にしたとの吉田清治の虚偽証言報道を2014年まで30年以上にわたって放置、訂正することがなかったことに関し、国際世論における日本人の名誉を毀損したとして朝日新聞社に対して同新聞読者を中心とした

集団訴訟が提起されました。

朝日新聞集団訴訟

(出典/朝日新聞を糺す国民会議HP)

三井住友生命保険集団訴訟
三井住友生命保険が発売している学資保険について、元本割れのおそれがあるにもかかわらず、
担当者がその旨を十分に説明しなかったことで、顧客が被った損害の賠償を求めた事案です。

三井住友生命保険集団訴訟

(出典/日本共産党 新聞あかはたHP)

外国のクラスアクション事例


タカタ集団訴訟・カナダ事例
タカタ社が製造したエアバッグの欠陥問題で、同社と米国子会社2社がカナダやアメリカの消費者から複数の集団訴訟を提起された事案です。
訴状によると原告側は一般的賠償及び懲罰的賠償として合計で最大約2288億円を請求していました。

カナダ・タカタ集団訴訟

(出典/日本経済新聞)
タカタ集団訴訟・アメリカ事例

アメリカ・タカタ集団訴訟

(出典/ライブドアブログ 世界のニュース トトメス5世

クラスアクションのメリット・デメリット


既に集団訴訟の法整備が整っている
アメリカのクラスアクションの実態を踏まえると
集団訴訟のメリットとデメリットは表裏の関係にあると言えます 。
具体的には、確かに集団訴訟を提起した原告側が勝訴すれば、確定した判決の効力は訴訟に参加しなかった他の消費者にも及びます。
そうしますと、訴訟に関与していない消費者も被告企業にして裁判所が認めた補償金を請求できます。
その反面、仮に消費者側が敗訴してしまうと、
前述の通り、判決の効力は消費者全員に及びます。
ですから、訴訟に関与していない消費者は、自ら訴訟関与する機会がないまま被告企業に対して何ら金銭的請求ができなくなってしまいます。

クラスアクションのメリット・デメリット

(出典/消費者の窓P)

日本の集団訴訟制度

選定当事者制度
選定当事者制度(民事訴訟法29条)とは、
多数存在する利害関係人の中から、
訴訟当事者として実際に裁判に関わる人員を
選ぶ手続をいいます。

選定当事者制度

選定当事者制度
(出典/消費者の窓HP)

消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律
「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」とは、
消費者契約に関して相当多数の消費者に生じた財産的被害について、消費者と事業者との間の情報の質・量や交渉力の格差により、
消費者が自ら回復を図ることには困難を伴う場合がある。
そのため、財産的被害を集団的に回復するための裁判手続を創設することで、国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする法律です(法第1条)。

特例法の概要

(出典/wikipedia)

特例法の内容

(出典/鬼の法務部HP)

企業側の対応

クラス認定のハードルを下げる
クラスアクションには「クラスの認定」というステップがあります。
裁判所が、被害者の一部が全体(クラス)を代表する訴訟(アクション)であると認めて、はじめて訴訟が正式にスタートします。
そして、「クラスに該当しない」ことを被告企業が立証できれば、クラスアクションは未然に防げます。

クラス認定のハードルを下げる

(出典/ダイヤモンド社 オンラインHP)

自社製品の顧客動向を十分に把握する

説明義務の徹底

(出典/アサミ経営法律事務所)

最後に


確かに、近年では「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」の成立もあり、
消費者の企業に対する集団訴訟の要請も高まってきています。そうしますと、企業側としては戦々恐々と言った状況にあるともいえます。
しかし、企業側としては消費者に対して随時当該商品についての説明義務を尽くすことや、
消費者に対する補償金額を当該消費者の個別具体的状況に応じて柔軟に対応する等、
誠意を持った対応をとることを強く意識していけば、
消費者から集団訴訟を提起されるリスクを
相当程度に軽減できるのではないでしょうか。

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