送りつけ商法、即処分可能に、改正特定商取引法一部施行
2021/07/09 消費者取引関連法務, 特定商取引法, その他
はじめに
先月9日に衆参両院で可決成立した改正特定商取引法の一部が6日施行されました。売買契約に基づかないで送付された商品に関する規定が変更されております。今回は送りつけ商法と特商法の改正ポイントを見ていきます。
改正の経緯
消費者の脆弱性につけ込む悪質商法に対する抜本的な対策強化と新たな日常における社会経済情勢等の変化への対応を目的として今年3月に特定商取引法と預託法等の改正案が国会に提出され、先月9日に可決成立しました。本改正では送りつけ商法対策の強化の他に詐欺的定期購入商法対策、販売預託スキーム規制などが盛り込まれております。
これら改正法は先月16日に公布され、その日から起算して1年以内に施行される予定です。そして先日7月6日にそのうちの一部である送りつけ商法対策強化についての59条、59条の2が先行して施行されました。
送りつけ商法とは
送りつけ商法とは、購入の申し込みをしていない者に一方的に商品を送りつけて、返送または購入しない旨の通知を行わない場合に購入の意思ありとみなして代金を請求する商法を言います。ネガティブ・オプション商法とも呼ばれます。
商品を一方的に送りつけるという行為は、民法的に見た場合は売買契約の申し込みに当たります。これに対して相手方が承諾しなければ売買契約は成立せず、一定期間内に返送しなければ購入とみなす旨を送りつけた側が表示していたとしても同様です。
しかし送りつけられた側にとっては、当該商品はあくまで業者の所有物であることから勝手に処分することもできず、また無償受寄者としての保管義務の問題も生じる可能性があります(民法659条)。そこで特商法では一定の規制を設けております。
従来の特商法の規定
改正前の特商法59条1項によりますと、販売業者が申し込みをした者、売買契約を締結した購入者以外の者に一方的に商品を送りつけた場合は、その商品が送付された日から起算して14日を経過するまでに相手方が承諾せず、かつ販売業者が引取をしないときは、販売業者は送付した商品の返還を請求することができないとされます。相手方が販売業者に引取り請求をした場合は、その日から7日となります。
つまりこの期間が経過した場合は送付を受けた相手方は当該商品を自由に処分することができるということです。なお商品の送付行為が商行為となる場合は適用除外となっております(同2項)。
改正特商法の規定
上記のように従来は商品が送付された日から起算して14日が経過しないと相手方はその商品を処分することができませんでした。しかし今回の改正により一方的に送付されてきた商品はただちに返還請求できなくなるため、相手方は即時処分することが可能となります。
当然それによって売買契約も成立しないことから代金の支払い義務も発生せず、誤って代金を支払ってしまった場合でも返還請求することが可能です。また本規定は海外から商品が送付されてきた場合にも適用されるとされております。
コメント
今回の改正特商法施行によって業者が消費者に商品を一方的に送付しても、相手方はただちに処分でき、商品の返還請求も代金請求もできなくなりました。またこれ以外にも定期購入商品を定期購入ではないと誤認させる表示をした場合、相手方の取消権や契約解除妨害の禁止、適格消費者団体による差止、さらに罰則が新設されます。
さらに預託法でも販売した商品を購入者から預かり配当金を配布するといった販売預託行為も原則禁止となり罰則が新設されます。これらの改正法は1年以内の施行が予定されております。現行法の規定に加え、これらの改正法の規定も把握し、自社の取引状況を今一度確認し直しておくことが重要と言えるでしょう。
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