日産が1500万ドルで和解、米証券取引委員会とは
2019/09/24 海外法務, 外国法

はじめに
日産自動車は23日、前会長ゴーン被告が金商法違反で起訴された事件に関し米証券取引委員会(SEC)と1500万ドルを支払うことで和解したと発表しました。
ゴーン被告およびケリー被告自身もそれぞれ100万ドルと10万ドルの支払いを行うとのことです。
今回は米国の証券取引委員会(SEC)とその権限について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、日産自動車の元会長ゴーン被告と元取締役であるグレッグ・ケリー被告による有価証券報告書への巨額の虚偽記載により東京地裁に起訴された事件を受け、米証券取引委員会(SEC)と日産自動車は米国の行政手続きにより和解契約を締結したとされます。
SECは両被告によって退職時に支払われる予定だった1億4000万ドルの報酬を隠蔽し有価証券報告書に虚偽記載をしたとし、米国の投資家を欺いたと認定しました。
米証券取引委員会(SEC)とは
1929年の世界恐慌を機に当時のフランクリン・ルーズベルト米大統領が証券取引における不正行為に対処するために設置したのが証券取引委員会(SEC)です。
日本の金商法に該当する1933年証券法と1934年証券取引所法などのいわゆる証券諸法に基づき、インサイダー取引や不正会計、報告書への虚偽記載などを監視するべく様々な権限が付与されております。
SECの構成員は5名でアメリカ合衆国大統領によって任命されると言われております。
米証券取引委員会(SEC)の権限
米SECの行う法執行の手続きは大きく分けて民事手続き、行政手続き、刑事手続きに分かれていると言われております。
民事手続きでは違反行為に対し差止命令や民事制裁金などを裁判所に求める民事訴訟を提起することになります。
違法な利得の剥奪を求められることもあります。
行政手続きでは証券会社などの登録停止や営業停止、法人に対する民事制裁金、排除措置命令などを行政法判事による審問会を経て審決を求めることになります。
また違反の性質が重大または悪質な場合には司法省に刑事訴追を求めます。
このように日本の証券取引等監視委員会に比べかなり強力な権限が付与されております。
米証券取引諸法の域外適用
米国外の会社が米国外で行った行為に対し米国証券諸法を適用できるのでしょうか。
このような問題を一般に域外適用の問題と言います。
日本の独禁法で問題となることがありますが、米国では従来から判例で認められてきたと言われております。
また2010年7月からドッド・フランク法に域外適用を許容する名文規定がおかれたとされますが今なお議論が多い問題とのことです。
はじめに
本件で日産自動車の元会長と元取締役による巨額の虚偽記載が明るみに出たことにより米国証券取引委員会は行政手続きで民事制裁金の支払いを求めていたものと思われます。
今回和解で制裁金約1500万ドルなどの支払いとともに、ゴーン被告とケリー被告は今後10年間米国の上場企業の役員や取締役に就任できない旨の処分を受けたとされます。
以上のように日本での金商法違反行為は場合によっては米国など諸外国の証券取引法が適用されることも有りえます。
著名な例ではトヨタ自動車も米証券取引法が適用され訴訟となった例が挙げられます。
あらゆる分野でグローバル化が進む昨今、金商法や独禁法、知財分野では国内のみならず諸外国の法制度にも注意しておくことが重要と言えるでしょう。
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