北弘電社に対し、工事請負会社が経費・報酬の未払金請求訴訟を提起
2023/06/22 契約法務, 民法・商法, 下請法

はじめに
株式会社北弘電社(札証上場中)は、6月19日、請負会社である株式会社梅沢技建より未払い経費や報酬の支払いを求める訴訟を提起された旨を発表しました。北弘電社は、未払いはなかったとして争う方針です。
太陽光発電所の建設工事で未払い?
原告梅沢技建は、神奈川県に本社を置くメガソーラー発電所や墓苑などの造成工事会社です。北弘電社は、以下のプロジェクトにおいて、土木工事や設計・監理等の業務を梅沢技建に委託していたといいます。
・岐阜県高山市における太陽光発電所建設プロジェクト
・岩手県奥州市における太陽光発電所建設プロジェクト
これらのプロジェクトで梅沢技建は委託業務を完成させたものの、請負経費・報酬金の一部に未払いがあると主張し、5月1日付で札幌地方裁判所への提訴に至ったということです。請求金額は3億3,000万円にのぼります。
北弘電社は、梅沢技建が主張する請負経費・報酬金の未払金はないものと考えているとし、裁判で正当性を明らかにしていく方針です。また、今回の訴訟に絡んでの業績への影響などは現時点では不明としています。
工事トラブルで多いのが、追加工事
工事関連の請負契約では、高額な報酬となることが少なくありませんが、その一方で、トラブルも散見されます。トラブル類型で多いものの一つに、追加・変更工事費用に関連したトラブルが挙げられます。具体的には、
・工事を進行する中で変更改善案が生まれたケース
・工事の過程で新たな工事の必要性が認識されたケース
・発注元が追加工事を新たに希望したケース
などで追加・変更工事が行われ、トラブルに至るパターンです。
このような追加・変更工事が行われる場合、当初の契約と比べて金額が少ないこと、相応に頻度も高いことなどから、契約書によらずに工事が進められることも珍しくないといいます。しかし、追加・変更工事として追加の請負代金が発生するのか、元の委託内容の範囲内での工事なのかの線引きが曖昧なまま工事が進行した場合、後日のトラブルに繋がるおそれがあります。
そのため、追加・変更工事を行う際は、あらかじめ、
(1)当初の委託内容(工事内容)の確認
(2)追加費用に係る見積書の作成
などを行ったうえで、双方の認識をすり合わせ、最終的に覚書などの書面を作成しておくことが重要です。
なお、仮に覚書等の作成がないまま追加・変更工事が行われた場合でも、①施工の合意の事実や②工事内容が客観的に追加・変更工事と認められること、③当該工事を有償のものとする合意があったことなどを立証できた場合には、請負側からの報酬請求が訴訟上認められる余地がありますが、立証が難しい場合も少なくありません。その意味でも、やはり、事前に覚書等を作成しておきたいところです。
コメント
大きな金額が動くことが多い建設工事。未払いによりキャッシュフローが圧迫され、請負側が経営難に陥るケースも少なくないといいます。本件と関わりがあるかは明記されていませんが、倒産情報サイト「JCNET」によりますと、今回、原告となった梅沢技建も2022年末、資金繰りの急速な悪化により一時、事業を停止し倒産の危機にあったとされています。
請負側はもちろんのこと、発注側としても、信頼の置ける取引先の倒産は、スイッチングコストや業界内での風評の面からもできる限り避けたいところです。
追加工事に関連したトラブルでは、発注元が「サービスとして無償でやってくれるものと思っていた」と誤解しているケースも多いといいます。背景として、追加工事の度に、「これは有償なのか、無償なのか」と問い質すことにバツの悪さを感じる人間心理もありそうです。
法務としては、そうした人間心理に寄り添いつつも、「企業間の取引として、有償無償の線引きを明確にすることの重要性」を現場に周知して行くことが重要になります。
【参考リンク】
梅沢技建/資金調達の目処付き事業再開 メガソーラー工事(JCNET)
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