企業内ハラスメントに注意!
2014/11/26 労務法務, 労働法全般, その他
今月20日に東京消防庁において、男性消防士が女性消防士にプロレス技をかけ、期限切れ温泉卵を口にいれる等のパワハラ行為で懲戒処分となった事件が、そして、25日には、青森県警の男性警視ら3人が部下に暴言などのパワーハラスメントを1年間以上繰り返していたことが判明しており、パワハラ問題が連続してニュースになっている。
しかし、これは公務員に限ったことではない。一般企業でも表面にでていないだけで、多くのハラスメントが存在している可能性があり、ハラスメントをしている側としてはその自覚はなくても、されている側は、ハラスメントという認識が大きい場合が多々存在していると思う。今回は、パワハラを含めいくつかハラスメント行為の種類を紹介し、企業内におけるパワハラによる被害の法律的な救済と、企業の対応を考える。
ハラスメントの種類
代表的なものとして、 セクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメント、マタニティ・ハラスメントがある。
・セクシャルハラスメント(セクハラ)とは
男性から女性、女性から男性、同性同士、上司から部下、部下から上司、同期の間での、性的な嫌がらせ。男女雇用機会均等法の改正もあり、セクハラの定義も徐々に確立されてきている。
・ パワー・ハラスメント(パワハラ)とは
教育の場や職場など、自分の地位や権限を利用して相手に対していじめや嫌がらせをすること。
・ マタニティー・ハラスメント(マタハラ)
妊娠や出産を理由に職場などで精神的、肉体的にいじめや嫌がらせをすること。マタニティーハラスメントが原因で切迫流産をしてしまったケースもあり、マタハラは深刻な社会問題の一つともいえる。最近の事例としては、以前に本記事で紹介している「たかの由梨における従業員問題」がある。
その他、職場において起こりやすいハラスメントとして、セカンド・ハラスメント、リストラ・ハラスメント、スモーク・ハラスメントなどがある。
・セカンドハラスメントとは
セクシャル・ハラスメントの被害を企業側に訴えたことが原因で、二次被害で企業から嫌がらせを受けるハラスメント。企業の立場や世間体、セクハラ加害者の立場を考えセクハラの事実をもみ消してしまおうという考えから起こる。
・ リストラ・ハラスメント
企業が人件費削減などを理由にリストラをさせたい人をリストアップして、その人が辞めるようにしむけるために行う嫌がらせをいう。窓際に自分の席が追いやられていたり、明らかに企業を辞めるようにしむけているとしか考えられないような場所への転勤を命じられるなどの行為は、これに当たる。
・ スモーク・ハラスメント
企業など働く場所で上司などの喫煙による受動喫煙を強いられることによる嫌がらせ全般をいう。これに関しては、健康増進法(受動喫煙防止)など法整備の影響から減少傾向にある。
ハラスメント行為に対する法律
では、実際に、ハラスメント行為が起こった場合には、どの法律を使用するのか。ハラスメント行為を直接罰することができる法律は今の日本にはない。現在は、民法もしくは刑法での訴えがメインである。
・民事上の法律に関して
パワハラ・セクハラが発生した場合には、企業が従業員の心身の健康面について、安全配慮義務に基づく必要な措置をとっていない点、従業員の「人格権」の侵害という点から、不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)が挙げられる。これに加えて、会社は使用者責任(民法715条)を負う可能性がある。さらに、パワハラを放置したという事実があった場合には、安全配慮義務違反を理由に債務不履行責任(民法415条)を負う可能性がある。
・刑事上の法律に関して
刑事上の代表的な例としては、上司に殴る蹴るなどの暴行を受けて怪我をした場合や陰湿な嫌がらせや罵倒などが原因でうつ病などの精神疾患を発症した場合は、傷害罪(刑法204条)が適用される可能性がある。また、従業員の人格を否定するような発言や侮辱するような言動を繰り返すことで、指導の範囲を明らかに超えた嫌がらせ行為があった場合には、名誉毀損罪(刑法230条)が適用される可能性がある。
コメント~企業側の対応~
ハラスメント行為が起こり、従業員からの訴えが認められた場合には、企業における責任は重大である。法務としては、訴えられてから対応するのではなく、事前に人事部や労務部と連携をとり、事業主の方針の明確化およびその周知・啓発し、相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備を心がけ、社内でハラスメント行為が発生していないかを注意を払っておく必要性がある 。とはいえ、価値観・考え方の違う人が多く集まって一つの組織が成立している以上、ハラスメント行為を100%防ぐことは難しいかもしれない。万が一、ハラスメント行為が判明した場合には、ハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応が求められる。
過去にYahooで紹介されていた記事で、業務上問題点の多かった企業の従業員に対して、企業がハラスメントを伴う解雇を行ったところ、元従業員から不服を申し立てられた事案が紹介されていた。この事例では、企業が最初に相談した弁護士からは、「従業員としての地位がないことを確認する裁判を企業から起こすべき」とのアドバイスを受けたため、企業から元従業員に対して裁判を起こした。これに対して、元従業員は感情的になってしまい、徹底抗戦の上、元従業員側から、サービス残業についても裁判を起こすことが伝えられた。そこで別の弁護士に相談し、「元従業員に冷静になってもらうこと、解雇と未払い賃金に関する紛争を一挙に解決することを前提に、解決金を提示する」という方向で進めたところ、残業代を請求する新たな裁判は起こされず、無用な弁護士費用もかかることなく、早期に紛争が解決した。
この事例からも分かるように、企業としては、もしハラスメント行為が発覚した際には、真摯な対応が求められる。まずは、ハラスメント行為を発生させないことが第一ではあるが、仮に起こってしまっても十分な対応をするかしないかで企業側も雇用者側も状況が変わってくるので、慎重な行動をするべきであると思う。
関連サイト
- パワハラで警視ら3人注意 青森県警、1年以上暴言(exciteニュース)(リンク切れ)
- パワハラで警視ら3人注意 青森県警、1年以上暴言(47News)(リンク切れ)
- パワハラ110番
- 万全ですか?企業のパワハラ対策(中小企業のためのひまわりほっとダイヤル)
- ハラスメントの種類26(弁護士ヘルプ)
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