セクハラ、パワハラ、遂に「カラハラ!?」
2014/06/11 労務法務, 労働法全般, その他
カラハラとは
職場には様々なハラスメントがある。パワハラやセクハラ等だ。しかし、最近「カラハラ」と呼ばれるハラスメントがあることをご存じだろうか?
「カラハラ」とは、職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇を超えて、カラオケで歌うことが苦手・嫌いな人に、無理矢理歌わせることである。
カラハラの具体例として以下のものがある。
某飲料メーカー営業部社員として入った女性Aさんは、自分が音痴のため、昔からカラオケが嫌いだった。入社後付き合いで仕方なく飲み会の二次会等でカラオケには参加していたものの、歌うことを拒否してきた。
しかしある日、飲み会の二次会でカラオケに行き、上司が歌い終わった後、「Aちゃん、君も歌いなさい。」と言われ、最初は断っていたものの、上司の機嫌が次第に悪くなることを感じ、仕方なくマイクを取り、なんとか歌い終えた。すると、周りは微妙な雰囲気、上司もニヤけていた。その後、上司から一言。
「Aちゃんは、B社の接待に連れていけないな~」
翌日、上司から予定されていたB社の営業から外れるよう告げられ、代わりに、営業成績は私よりも低いが、カラオケでたくさん歌っていたCさんがB社の営業に抜擢された。Aさんは、これに対し、人事部に相談しても、上司が正しいとされた。
このような「カラハラ」に悩まされる人達は以前から存在しており、実際に取引先との接待中のカラオケで歌った挙句、営業から外され、他の部署に配置転換されたこともあるという。
コメント
「カラハラ」はパワーハラスメントにあたるのではないか?
パワーハラスメントとは、職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範疇を超えて、継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い、就業者の働く関係を悪化させ、あるいは雇用不安を与えることをいう(厚生労働省参照)。
そうだとすると、確かに、カラオケを用いた接待も仕事と言われることがあることからカラオケが「業務」に該当するという考え方もある。しかし、職業として継続して行われる仕事を「業務」というのであり、カラオケは契約締結という「本来の業務」を達成する一手段に過ぎず、カラオケ自体に継続性があるものではないだろう。とすれば、カラオケそれ自体が「業務」に含まれることは極めて稀であるといえる。
それにもかかわらず、わざわざカラオケが嫌いな社員を連れて行き、歌うことを無理強いすることは甚だ疑問である。
また、カラオケが嫌いで、歌いたくないのに歌わされる権利は、個人の人格権(憲法13条後段、民法710条)として保護されるべきであると考えられる。
そうであるとすると、接待、打ち上げの度にカラオケを強要することは「継続的に人格と尊厳を侵害する言動」に当たり得る。そして、上記の通り、カラオケをしなければ、配置転換のおそれがつきまとうとすると、カラオケが苦手な従業員は雇用に不安を継続的に抱くことになる。
よって、「カラハラ」はパワーハラスメントに認定されることは十分考えられる。
「カラハラ」を不法行為(民法709条)と認定した判例は未だ存在しないが、今後裁判で問題になる可能性が高いだろう。
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