最低賃金法違反容疑で再生タイヤ製造会社を書類送検 ー丸亀労基署
2026/01/15 契約法務, 労務法務, コンプライアンス, 労働法全般, メーカー

はじめに
香川労働局丸亀労働基準監督署が丸亀市の再生タイヤ製造業の会社を最低賃金法違反の疑いで書類送検していたことがわかりました。未払い賃金は合計約230万円とのことです。
事案の概要
報道などによりますと、同社の賃金の支払を担当していた取締役の女性(77)は、従業員12人の2023年5月分の賃金に関し、香川県の最低賃金以上の額で所定の期日までに支払っていなかった疑いが持たれています。
これを受けて、丸亀労基署は1月8日、同社と取締役の女性を最低賃金法違反の疑いで高松地方検察庁に書類送検しました。
2023年5月分の不払い分の合計は約230万円とされていますが、これ以外にも不払いが長期間にわたっていた可能性も指摘されているといいます。
なお、2026年現在、同社に従業員はおらず既に機能していない状態とのことですが、破産はしていないとされています。
労働基準法による賃金規制
従業員の賃金については労働基準法と最低賃金法で規定が置かれています。
まず、労働基準法24条1項および2項では、いわゆる賃金支払5原則が定められています。賃金支払5原則とは、
(1)通貨払いの原則
(2)直接払いの原則
(3)全額払いの原則
(4)毎月払いの原則
(5)一定期日払いの原則
となっています。
通貨払いの原則とは、賃金は原則日本円の通貨で支払わなければならないというものです。ただし、これには例外があり、労働者の過半数の同意がある場合は銀行振込等も可能です。また、2023年4月1日からデジタル払いも認められています。
そして、直接払いの原則とは労働者本人に直接支払うべきとするものです。これにも例外があり、入院中の労働者の妻など労働者本人と同視できる使者への支払も認められています。
全額払いの原則とは、労働者に賃金の全額を支払わなければならないというものです。たとえば、従業員が社用車をぶつけたなどの損害を出した場合、弁償代として賃金から天引きするといったことはできません。
ただし、租税や保険料など法律で認められたものの控除や、労使で合意された費用については例外的に認められます。
そして、賃金は毎月1回以上、それも決まった一定期日に支払う必要があります。年俸制でも月額に分割して払う必要があるということです。
最低賃金法による規制
労働基準法28条では、賃金の最低基準に関しては最低賃金法の定めるところによるとされています。
最低賃金制度は、労働者の生活の安定や労働の質を確保することを目的としています。
最低賃金は各都道府県ごとに地域別最低賃金と特定最低賃金が設定されています。
地域別最低賃金は最低賃金法9条に基づいて、それぞれの地域における労働者の生計費、賃金、事業の賃金支払能力などを考慮して決定されています。
たとえば、令和6年時点での東京の最低賃金は1163円、大阪は1114円となっています。
これに対し、特定最低賃金は特定の地域内の特定の産業についての最低賃金です。
これは関係する労使の申し出によって最低賃金審議会の審査を経て決定されます(15条)。
特定最低賃金は2025年時点では全国で223件設定されており、食品や鉄鋼、小売、精密機器などとなっています。
なお、地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が適用される場合は、高い方が基準となります。
会社が倒産している場合
上記のように会社は従業員に一定以上の賃金を支払うことが義務付けられていますが、賃金が未払いのまま会社が倒産した場合、従業員は賃金を受け取ることができるのでしょうか。
このような場合、労働者は「未払賃金の立替払制度」を利用することが可能です。これは国がその未払い賃金の一部を事業主に代わって支払うという制度です。
この制度の利用には会社と従業員双方に要件が設けられており、会社側は1年以上事業活動を継続していたこと、そして倒産したこととなっています。
労働者側の要件としては、認定申請が行われた日の6ヶ月前から2年の間に退職していること、定期的な賃金および退職金の未払い分が総額2万円以上あることとなっています。
申請期間は会社の破産等が決定した日または労基署長による倒産認定の日の翌日から起算して2年以内となっています。
コメント
本件で丸亀市の再生タイヤ製造会社では、香川県の最低賃金以上の賃金を所定の支払期日までに支払っておらず、またその状態が長期間にわたって継続している疑いがあるとされています。
最低賃金法に違反した場合、50万円以下の罰金が規定されており、また労基法の賃金規定違反についても6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が規定されています。
同社についての詳細は現状不明ですが、現時点では破産していないと言われています。
倒産状態と認定された場合は、従業員は立替払制度の利用も可能ではないかと考えられます。
以上のように、労基法と最低賃金法では厳格な賃金規定を置いており、労働者の生活の保障を図っています。
最低賃金法違反での摘発例では、本件のように業績悪化や事業の破綻がきっかけとなった事例が多いとされていますが、外国人技能実習生などに対し常態的に最低賃金未満の賃金しか支払っていないケースも少なくないといわれています。
自社の勤怠管理等に問題はないか見直しておくことが重要といえるでしょう。
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