裁量労働過去最多、残業代削減の抜け道に。
2013/03/01 労務法務, 労働法全般, その他

事案の概要
仕事の時間配分などは従業員に任せるかわりに、一定時間働いたとみなす「裁量労働制」が、2011年に全国で初めて9000件を超え、過去最多になった。規制緩和による経済成長を主張する経団連は適用拡大を求めるが、際限のない残業の助長につながるとの懸念もでている。 全国の労働基準監督署への届出数は増加傾向にあり、専門業務型は過去十年で3倍、企画業務型は2004年の適用要件緩和で、翌年は2倍に膨れ上がった。
裁量労働制は、成果主義的な側面を有し、いくら働いても労使で合意した労働時間分の賃金だけを払えばよい。これを利用すれば残業代を削減することが可能となる。
不景気な経済状況に加え、「名ばかり管理職」への規制が強まり、残業代削減の抜け道として、裁量労働制が用いられるケースが増えている。 特にIT業界での裁量労働の採用が顕著であり、劣悪な労働環境の一因となっている。
裁量労働とは
裁量労働とは時間配分などは従業員に任せるかわりに、実際に働いた時間とは関係なく一定時間働いたものとみなす制度である(労働基準法38条の3第1項本文)。専門的な仕事(「専門型業務」)やクリエイティブな仕事(「企画業務型」)は労働時間を管理するより労働者の裁量に委ねた方が効果的であることが制度導入の一つの理由である。他方でどれだけ働いても一定時間しか働いたことにならないため長時間労働による過労の温床となっている。裁量労働の導入にあたっては労使協定の締結や、労働基準監督署への届け出などが要件となっている。
「専門業務型」「企画業務型」について詳しくは以下を参照
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/sairyo.html(厚生労働省ホームページ)
コメント
良かれと思って採用した制度であっても、脱法行為に利用されてしまうとは残念である。
しかし、IT業界における一部SE等過酷な労働条件で働く人がいる現実がある限り、法はその現状に口実を与える役目しか担えないのかもしれない。法の規制も重要ではあるのであろうが、同時に過酷な労働条件を強いている現実社会の現状も同時に変えてゆかなければならいと思われる。
関連条文
労働基準法38条の3、同4
e-gov
関連コンテンツ
新着情報

- まとめ
- 株主提案の手続きと対応 まとめ2024.4.10
- 今年もまもなく定時株主総会の季節がやってきます。多くの企業にとってこの定時株主総会を問題無く無...
- 弁護士
- 大谷 拓己弁護士
- 弁護士法人咲くやこの花法律事務所
- 〒550-0011
大阪府大阪市西区阿波座1丁目6−1 JMFビル西本町01 9階

- 業務効率化
- 法務の業務効率化

- ニュース
- オランダ - 大企業向け新たな財務諸表提出要件2025.6.20
- オランダでは、2025年度の財務報告から適用される大企業向けの新たな要件が導入され、財務報告制...

- 解説動画
岡 伸夫弁護士
- 【無料】監査等委員会設置会社への移行手続きの検討 (最近の法令・他社動向等を踏まえて)
- 終了
- 視聴時間57分
- 弁護士
- 福丸 智温弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号
- セミナー
森田 芳玄 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所 パートナー/東京弁護士会所属)
- 【オンライン】IPOを見据えた内部調査・第三者委員会活用のポイント
- 終了
- 2025/05/21
- 12:00~12:45

- 解説動画
大東 泰雄弁護士
- 【無料】優越的地位の濫用・下請法の最新トピック一挙解説 ~コスト上昇下での価格交渉・インボイス制度対応の留意点~
- 終了
- 視聴時間1時間

- 業務効率化
- クラウドリーガル公式資料ダウンロード