ハラスメント対策まとめ

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1.はじめに

 ハラスメントが社会問題として議論されて久しい昨今、職場では現在も様々なハラスメントが発生しています。
 今回は、職場で発生する主なハラスメントの種類とともに、その定義と対策についてまとめたいと思います。
 ※参照:https://jinjibu.jp/article/detl/tieup/306/

2.ハラスメント

 そもそも、ハラスメントとは、いろいろな場面での「嫌がらせ、いじめ」を言い、他者に対する発言・行動等が本人の意図には関係なく、相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、脅威を与えることを指すといわれています。
引用元:https://www.osaka-med.ac.jp/deps/jinji/harassment/definition.htm
(ハラスメントの定義 – 大阪医科大学)
 その種類は様々で、30種類以上存在するとされていますが、主なものとしては、以下のものがあります。

3.主なハラスメント

●セクシャルハラスメント(セクハラ)
 男女雇用機会均等法11条1項によると、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」をいうとされますが、裁判上の事実認定においては、これに加え「相手方(被害者)の意に反するか」という点が重要視されます。そのため、一般的には、「相手方の意に反する性的言動により就業環境が害されること」をいうとされています。
具体的には、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘いなどの発言、必要のない身体的接触などが「性的な言動」に当たるとされるので、相手方の性的指向や性自認に関わらず、このような言動には注意が必要でしょう。
また、①それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型セクシャルハラスメント)、②性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に大きな悪影響が生じること(環境型セクシャルハラスメント)の2つの類型があるとされます。
引用元:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/
koyoukintou/seisaku06/index.html

(職場でのハラスメントでお悩みの方へ(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)/厚生労働省)

●パワーハラスメント(パワハラ)
 令和元年5月29日に成立した「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(略称、労働施策総合推進法)において、
「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」とされています(同法30条の2参照)。
 その類型としては、①身体的な攻撃、②精神的な攻撃、③人間関係からの切り離し、④過大な要求、⑤過小な要求、⑥プライバシーの侵害があるとされています。
引用元:http://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/foundation/pawahara-six-types/
(あかるい職場応援団/パワハラ6類型/厚生労働省)

●マタニティーハラスメント(マタハラ)
 マタハラは、職場で女性労働者に対してその女性労働者が妊娠・出産したことや妊娠又は出産に関する言動により、女性労働者の就業環境が害されることをいいます(男女雇用機会均等法11条の2参照)が、労働者に対する育児休業、介護休業その他の子の養育又は家族の介護に関する言動により、これらの労働者の就業環境が害されること(育児・介護休業法25条参照)もハラスメントとされています。
具体例としては、産前休業の取得に対して「休みを取るなら辞めてもらう」という上司の発言や、妊娠・出産、育児・介護に関する制度利用の申請をしたことに関して、その申請を取り下げるように言うことがハラスメントに該当するとされています。
このように、近年では、男性が育児参加を通じて自らの父性を発揮する権利や機会を、職場の上司や同僚などが侵害する言動におよぶ、パタニティーハラスメント(パタニティー(Paternity)=“父性”)も問題となっています。
引用元:https://jinjibu.jp/keyword/detl/591/
(パタハラ/日本の人事部)

4.ハラスメント・ハラスメント

 一方、何でもハラスメントと主張する社員の言動を、社員の会社に対するハラスメントとして捉えた、ハラスメント・ハラスメント(ハラハラ)も存在するといわれています。
例えば、何度も同じミスを繰り返す社員に対し、少し強く注意したところ、翌日人事に「上司が私にだけ注意してくるので、パワハラを止めさせて下さい。」と相談された等のケースがこれに当たるとされます。
このように、仕事上の指導や会話が何でもハラスメントと主張されるようになると、上司は社員への指導を放棄したり、法務担当者はその対応に多く時間を割かれることになりかねず、業務に支障をきたすことが考えられます。
引用元: https://mag.smarthr.jp/trouble/detail/harassment-harassment/(何でもかんでも「ハラスメントだ!」・・・実在する「ハラ・ハラ社員」の実態とは)

5.ハラスメント対策

 職場におけるハラスメントは違法行為であるばかりでなく、企業としては職場秩序の乱れや業務の支障が生まれ、社会的評価に悪影響を及ぼす事態を招くことが考えられます。
そのため、その対策は非常に重要で、上記のパワハラに対する労働施策総合推進法やマタハラに対する均等法、育休法は、ハラスメントに対して労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備と、その他雇用管理上必要な措置をとることを事業主に義務付けています。
また、厚生労働省はハラスメントに対して、その発生予防対策の徹底も呼び掛けています。
 そのため、法務担当者としては、社内でのハラスメント発生防止策を講じ、実行していくことが対策の第一歩であると考えます。その際には、通常のハラスメントだけでなく、上述のハラハラに対しても対応できるような仕組み作りを行うことが望ましいでしょう。

 予防策としては、まず、①企業のトップによる、ハラスメント撲滅メッセージ等の発信を行うことが考えられます。企業としてハラスメント対策に取り組むことを明確に表明することで、組織としてハラスメント発生を防ぐ意識が育まれ、実際にハラスメントが発生した場合でも、被害にあった社員やその周囲の人たちが問題の指摘、解消に向けた発言をしやすくなり、対策の実効性につながることが期待できるでしょう。
次に② 就業規則の改定・周知や労使協定などによって、ハラスメントに対し厳正に対処する旨の社内ルールの作成や、企業内外に相談窓口の設置を行うことが考えられます。
相談窓口を設置する場合であれば、事前に対応マニュアル等を作成することで、相談内容がハラスメントに該当するのかを窓口の段階で判断できるようになることが期待できます。
これによって、通常のハラスメントに対し迅速に対応することが出来るだけでなく、ハラハラ問題の対策にもなると考えられます。また、担当責任者を決めておくことも、対策の実効性につながると思われます。
また、③ 社内でアンケート等を行うことにより実態調査・把握を行いつつ、④ ハラスメント防止教育・研修の実施を行うことで、社内におけるハラスメント対策の周知・啓蒙活動を進めることが考えられます。
これによって、ハラスメントを発見できるだけでなく、現状の社員のハラスメント意識を調査した上で、社内で実効性のある教育・研修内容の作成に取り組むことができると思われます。
 そして、ハラスメントが発生してしまった際には、事前に設置した相談窓口などから問題を確認し、具体的な対応を行うと同時に、再発防止の取り組みとして行為者等に対する研修などを実施することが考えられます。
引用元:https://www.hataraku.metro.tokyo.jp/sodan/siryo/24koyoubyodoGB_03.pdf
(職場におけるハラスメント防止・対応方法/厚生労働省)

6.コメント

 ハラスメントは紹介したもの以外にも多種多様に存在していることは、上述のとおりですが、これらはほとんどが相手方が嫌だと思えばハラスメントとされるものです。
そのハラスメントが具体的に不法行為等を構成するかはケースバイケースといえますが、いずれにしろ、ハラスメントが職場秩序を乱す恐れがあることなどを考えると、発生しないに越したことはありません。
 ハラスメント発生を未然に防ぐため、また、ハラハラ問題とならないようにするためには、上述の対応策とともに、個々の従業員と日ごろから交流し、どのような行為に嫌悪感を覚えるのかを把握することで、ハラスメントの芽を摘むことはできるのではないかと考えます。
引用元:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000137179.pdf(職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント対策やセクシュアルハラスメント対策は事業主の義務です!!/厚生労働省)

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1987年 東京大学法学部卒業
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1995年 ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業
2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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