通報窓口に守秘義務、公益通報者保護法の改正について

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はじめに

 組織の不正を内部告発した者を保護する公益通報者保護法の改正案が8日、参院本会議で全会一致で可決成立しました。組織内の通報窓口担当者に罰則付きの守秘義務が導入されます。今回は公益通報者保護法について見ていきます。

改正の経緯

 国民生活の安全をそこなう企業不祥事は内部告発によって発覚することが少なくなくないと言われております。そのような内部告発行為は正当な行為として事業者等からの不利益取り扱いから保護し、もって公共の安全を保護することを目的に公益通報者保護法が2004年に制定されました。しかしそれにもかかわらず、近年も事業者等の不祥事は後を絶たず、より早期の是正をしやすくし被害の防止を図ることが必要であるとして今回の改正がなされたとされております。

公益通報者保護制度の概要

(1)保護の対象

 公益通報とは、労働者が労務提供先の不正行為を、不正の目的でなく一定の通報先に通報することを言うとされております。ここに言う「労働者」とは労基法9条で規定される「労働者」と同義で、正社員、派遣労働者、アルバイト、パートなどの他公務員も含まれます。「労務提供先」とは勤務先の会社、派遣先、取引先の事業者が含まれます。

(2)通報対象事実

 公益通報の対象となる事実とは、対象となる法律に違反する「犯罪行為」または「最終的に刑罰につながる行為」とされております。現在対象となっている法律は、個人の生命身体の保護を目的とする刑法、食品衛生法、建築基準法、薬機法、核関連法、消費者保護を目的とする金商法、景表法、特商法、割賦販売法、JIS法、公正競争を保護する独禁法、不正競争防止法、下請法、その他労基法や不正アクセス防止法、労基法、個人情報保護法など多岐にわたります。あくまでも刑事罰の対象となる行為が通報対象事実です。

(3)通報先

 通報先としては事業者内部と行政機関、その他の事業者外部に分けられます。事業者内部とは労務提供先または労務提供先があらかじめ定めた者とされます。あらかじめ定めた者とは社内規定などで定めた社外弁護士や労組などが想定されます。行政機関は通報対象事実について処分や勧告等をする権限のある行政機関を言います。その他の事業者外部とは報道機関や消費者団体、事業者団体などが挙げられます。

(4)保護の内容

 労働者が要件を満たした公益通報をした場合、そのことを理由とする解雇、その他の不利益な取り扱いが禁止されます。不利益な取り扱いとは降格、言及、訓告、自宅待機、退職強要、給与上の差別、専ら雑務に従事させるといった行為が挙げられます。また派遣先による派遣契約の解除、交代を求めることも同様です。

改正の概要

 今回の改正で、事業者には窓口の設定、調査、是正措置など内部通報に対応するための体制の整備が義務付けられます。また実効性を確保するため指導や公表などの行政措置が導入されます。なお体制整備については従業員300人以下の場合は努力義務となります。そして内部調査等を担当する者には罰則付きの守秘義務が導入されます。行政機関や報道機関への通報の条件も緩和され、生命身体への危害のみならず財産に対する損害などでも報道への通報が可能となります。また保護の対象となる労働者も退職後1年以内の退職者や役員も追加され、対象事実についても行政罰の対象となるものに拡充されます。保護内容も通報に伴う賠償責任の免除が明記されることとなります。

コメント

 内部告発に絡む近年の事例では、会社内で内部告発しても、告発先の担当者が違法行為を行っていた者に通報者の氏名を漏洩し、それにより不利益な取り扱いを受けると言ったものが多いとされます。そのため今回の改正で担当者に罰則付きの守秘義務が設けられることとなりました。また対象事実の拡充や行政機関、報道機関への通報要件も緩和されます。しかし不利益取り扱いを受けたことについて訴訟での立証責任の緩和は見送られることとなり、通報者保護はなお不十分であるとの声も上がっております。今回の改正法は2022年6月を目処に施行される予定とされております。公益通報体制を今の段階から構築しつつ、内部告発を行いやすい社内環境作りが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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