東京地裁が一部返還命令、宅建業の仲介手数料について

はじめに

 賃貸住宅の仲介手数料は原則家賃の半月分であるとして借り主が不動産仲介の「東急リバブル」(渋谷)に対し手数料一部返還を求めていた訴訟で7日、東京地裁は一部返還を認める判決を出しました。業者側は1ヶ月分とする承諾を得ていなかったとのことです。今回は宅建業の仲介手数料について見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、原告側の男性は2013年1月8日、同社の担当者に対し物件を借りたい旨の連絡をし10日に担当者から契約締結をいつ行うかについて連絡を受けたとされます。その後男性は20日に契約を交わし22日に同社が請求した家賃1ヶ月分に相当する22万5000円の仲介手数料を支払いました。しかしその際に仲介手数料は原則半月分であるとの説明もなく、1ヶ月分の手数料を受け取る承諾も得ていなかったとして、男性は支払った手数料の半分の返還を求め提訴していたとのことです。

不動産仲介手数料に関する規制

 宅建業法46条によりますと、宅地建物取引業者が不動産の売買や賃貸などを仲介した際に受け取ることができる報酬の額は国土交通大臣が定めるとしています(1項)。そしてその額を超えて報酬を受けてはならないとされており、国土交通大臣が定めた報酬額を事務所ごとに公衆の見やすい場所に掲示しなければならないとしています(2項、3項)。また47条2号では宅建業者の禁止事項として「不当に高額な報酬を要求する行為」が挙げられており、違反した場合には1年以下の懲役、100万円以下の罰金またはこれらの併科となっております(80条)。

具体的な仲介手数料の額

 昭和45年建設省告示第1552号によりますと、賃貸借の媒介または代理の場合は依頼者の承諾を得ている場合は1ヶ月分の賃料の1.08倍を、承諾がなければ0.54倍を報酬として受け取ることができます。不動産売買の媒介の場合は不動産価格に次の割合を乗じたものとなります。①価格が200万円以下の場合は5.4%、②200万円~400万円の場合は4.32%、③400万円を超える場合は3.24%となります。

宅建業者の説明義務

 宅建業法35条1項では1号から14号まで宅建業者が不動産の売買や賃貸を仲介する際に説明しなければならない事項を詳細に規定しております。具体的には当該不動産の登記内容や都市計画法などによって制限がかかっていないか、水道や電気などのインフラの整備状況といった不動産自体に関することから報酬や契約解除、損害賠償や違約金、瑕疵があった場合の措置といった契約自体に関することまで挙げられております。

コメント

 本件で東京地裁は業者が賃料の1ヶ月分を報酬として請求するには仲介をする前に承諾を得る必要があるとし、本件では担当者が原告男性に契約締結日を連絡した10日に仲介が成立したとして、その時点で承諾を得られていないと認定し、1ヶ月分の報酬を受取ることはできないとしました。つまり契約成立までに原則は半月分である旨の説明と1ヶ月分を受け取る承諾を得なければならないということです。上記のように宅建業者は仲介の際にはかなり細かな説明義務が課されており、報酬などの契約に関する事項も含まれておりますがこの判決でより明確化されたものと言えます。実際には手数料は原則半月分ということは一般にはほとんど知られておらず、また仲介の際にも説明がなされているケースは少ないと言われております。不動産仲介業を行っている場合だけでなく、仲介を依頼する場合にもこれらの説明がなされているかを慎重に確認しておくことが重要と言えるでしょう。

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著作に『仕事でよく使う・すぐに応用できるビジネス契約書作成ガイド』(共著)(清文社、2017)、『実務Q&Aシリーズ 懲戒処分・解雇』(共著)(労務行政、2017)等がある。

■荻野聡之
アンダーソン・毛利・友常法律事務所/アソシエイト弁護士

03年東京大学法学部卒業
06年東京大学法科大学院卒業(法務博士(専門職))
08年弁護士登録
労働法、危機管理、事業再生等の法分野に関する業務を中心に取り扱っている。
著作に『企業のための労働実務ガイド1 Q&Aと書式 解雇・退職』(共著)(商事法務、2013)、『労使双方の視点で考える 27のケースから学ぶ労働事件解決の実務』(共著)(日本法令、2015)、『M&Aにおける労働法務DDのポイント』(共著)(商事法務、2017年)等がある。

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1987年 東京大学法学部卒業
1989年 弁護士登録
1995年 ロンドン大学UCL(LL.M.)卒業
2000年よりTMI総合法律事務所にパートナーとして参画
2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

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