ベビー用品2社に排除措置命令へ、再販売価格の拘束とは

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はじめに

 ベビー用品2社が小売店に安売りしないよう販売価格を指示していたことが独占禁止法に違反するとして、公正取引委員会は2社に排除措置命令を出す方針を固めていたことがわかりました。今後意見聴取を経て結論を出すとのことです。今回は独禁法が禁止する再販売価格の拘束について見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、ベビー用品メーカー大手のアップリカ・チルドレンズプロダクツ(大阪市)とコンビ(東京都)は数年前からベビーカーやチャイルドシートなどについて自ら設定した価格以下では販売しないよう小売店に求めていたとされます。また値下げをしないことに同意した小売店だけに卸すといった行為や値下げが見つかった小売店に対して取引停止をほのめかすといった行為がなされていた疑いもあるとのことです。今後公取委は意見聴取などの手続を経て正式な処分を出す方針です。

再販売価格の拘束とは

 独禁法では禁止行為として各種の「不公正な取引方法」が規定されております(19条、2条9項各号)。代表例としてはいわゆるボイコットと呼ばれる共同の供給拒絶や不当廉売、拘束条件付取引などがありますが、再販売価格の拘束もその一つです。メーカーが小売店などに一定の価格を示し、それ以下で売らないよう要求する行為が典型例と言えます。違反した場合には排除措置命令(20条)だけでなく課徴金納付命令の対象となっております(20条の5)。

具体的な要件

 公取委の流通・取引慣行ガイドラインによりますと、再販売価格の拘束となるための要件は何らかの人為的手段によって相手事業者が示した価格で販売することについて実効性が確保されているかで判断されます。示された価格で販売することが契約内容として定められている場合、相手に同意書を提出させた場合、同意した相手とのみ取引している場合などは実効性が確保されていると判断されることとなります。それ以外にも実効性確保の例として、値引きした場合は出荷停止する旨を示唆する行為、価格を守っていればリベートを提供する行為、価格を守っているかについて報告を徴収したり、店頭で監視、帳簿を閲覧する行為なども挙げられております。単に市場調査としての価格調査は該当しないとされます。

正当な理由

 再販売価格の拘束は「正当な理由」ある場合には違法とはなりません。この正当な理由は公正な競争秩序の見地から見て相手事業者の自由競争を阻害しないものでなくてはならず、事業経営上の必要があるというだけでは正当理由とは認められません(最判昭和50年7月11日)。ガイドラインでは再販売価格を拘束することによっていわゆる「フリーライダー問題」が解消する場合に認められ得るとしています。フリーライダー問題とは販売促進活動を行っていない流通事業者が販売促進活動を行った事業者による需要喚起にタダ乗りする現象で、これを各事業者が嫌い、販促や競争が行われなくなる問題を言います。

コメント

 本件でベビー用品2社は小売店に設定価格以下で販売しないよう求めており、また値下げしないことに同意した小売店にだけ製品を卸したり、割引を行った小売店には取引停止をほのめかすなどの行為が疑われております。これらが事実であれば再販売価格の拘束に該当する可能性は高いと言えます。同意しなければ製品を卸してもらえず、また割引が見つかれば取引が停止するといった点は価格拘束の実効性を担保していると言えるからです。このように希望小売価格を超えて、その価格を強制する場合には違法となります。また正当理由があるといった反論がなされることも多いと言えますが、上記のように事業上、経営上の必要性があるといっただけでは認められず、正当理由による反論は通常困難と言えます。小売業者や卸売業者に製品を卸している場合には価格の強制となっていないか、安売りする業者を排除していないかを今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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