アップル社と欧米の出版5社が、電子書籍の価格に関連して反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴される
2012/04/12 独禁法対応, 独占禁止法, エンターテイメント

アップル社と欧米の出版社が、電子書籍の価格に関連して反トラスト法(独占禁止法)違反で提訴される
事案の概要
米司法省は4月11日、アップル社と欧米の出版5社が、電子書籍(インターネットを通じて配信される出版物のデータ)の価格を共謀して不当に吊り上げた行為が、反トラスト法(独占禁止法)違反に当たるとして、ニューヨーク州の裁判所に提訴した(関連リンク1・2)。
欧州委員会(EUの政策執行機関)もまた、アップル社と各出版社を反トラスト法違反の疑いで調査している(関連リンク3)。
米司法省によれば、価格を共謀して不当に吊り上げた行為(吊り上げ行為)の概要は以下のとおりである。
iPadの登場以前、アマゾン社のKindle端末による電子書籍市場で独占的な地位を占めており、アマゾン社は各出版社に対し、電子書籍を紙媒体の書籍より廉価な9.99米ドルで販売するよう強制していたが、各出版社はアマゾンによる電子書籍の値引き販売の仕組みを不当と考えていた。
そこで各出版社は、電子書籍の値上げをアマゾン社に強制する方法を見つけるため、2009年後半にアップル社に働きかけ、吊り上げ行為に及んだ。すなわち、多くの書籍に「特約店価格」と呼ばれる12.99米ドルの価格を設定し、アップルが30パーセントのマージンを取得するという行為に及んだのである。
吊り上げ行為開始のおおよそ3日後には、アマゾン社は各出版社に自由な価格設定を認めることとなり、Kindleにおける電子書籍の価格も値上がりした。結果、消費者は電子書籍一冊つき2から3米ドル、全体では最大1億米ドルもの不当な支出をさせられたと考えられる。
なお、各出版社のうち和解に応じた2社は、別の訴訟を提起した州政府に対し課徴金として5100万米ドルを支払う合意をしている。
所感
吊り上げ行為といっても、通常の価格交渉との境目は微妙である。価格吊り上げ行為が特に反トラスト法違反とされた理由はどこにあるのだろうか。
まず、アップル社の特約店価格はアマゾン社の価格より3米ドル高いから、小売価格は上昇する。小売価格が上昇すると売り上げ数は減少するから、各出版社は、利益が大きくならない限りこのような取引をしないはずである。
だが、実際にはアップル社へのマージンを差し引くと各出版社の取り分は約9米ドルとなり、各出版社の利益が減ることから、本来はしないはずの取引であるといえる。
そこで、価格操縦の意思があるとされたのではないか。
このように、反トラスト法(独占禁止法)は難解であるが、注意すべき法令の一つである。
関連リンク
1.DOJ sues Apple over price-fixing scheme
2.U.S. v. Apple and Hachette, et al.
3.Antitrust: Commission opens formal proceedings to investigate sales of e-books
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