塾ー著作権の甘い認識ー
2012/04/09 知財・ライセンス, 著作権法, その他

事案の概要
学習塾「進学会」(北海道札幌市)は3日、無断で教科書をほぼ丸写しした教材を利用し、著作権を侵害していた恐れがあると明らかにした。「進学会」は東証1部上場の学習塾で、400以上の教室を展開する。教科書会社から著作権管理を委託されている一般社団法人「教学図書協会」(東京都江東区)は、「進学会」の小中学生の英語・国語計5冊の教材において引用が確認されているとしている。「進学会」の平井崇浩社長は7日、「ご迷惑とご心配をおかけし、大変申し訳ない」と受講生と保護者に謝罪した。
また、7日には、進学塾「浜学園」(兵庫県西宮市)が約10年間に渡って教科書を無断で複写し、教材に利用していたことも分かった。「浜学園」は近畿地方を中心に34教室を展開する中学受験専門の進学塾。社会科の講師が小学生の教科書から図表・文章などを切り貼りして地理・歴史の教材を約10年間作成していたという。
例えば、国語の教科書に載っている個々の文学作品などの著作権は作家側にある。ただし、教科書は掲載する題材の選択を経、また学年に合わせて書き換えが行わるといった編集がなされる。そのため、全体の著作権は教科書会社にある。塾が教材に引用するためには教科書会社側の許諾も得て、使用料を支払う必要がある。教科書の著作権は「教学図書協会」が教科書会社から管理を受託しているため、「教学図書協会」に利用許諾申請し、使用料を支払うこととなる。
ただし、一定の条件を満たした「引用」は、著作権法32条により、権利者に無許可で行うことができる。これは表現の自由と著作権保護の調和を目的としており、著作権侵害にはならない。
「引用」と言えるためには、以下の条件が必要と文化庁はウェブサイトで示している。
1 「引用する資料等は既に公表されているものであること」
2 「「公正な慣行」に合致すること」
3 「報道、批評、研究などのための「正当な範囲内」であること」
4 「引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること」
5 「カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること」
6 「引用を行う必然性があること」
7 「出所の明示が必要なこと(複製以外はその慣行があるとき)」
文化庁「著作権なるほど質問箱」12/04/09 http://chosakuken.bunka.go.jp/naruhodo/ref.asp
コメント
塾の講師は学生のアルバイトもいるが、大学の卒業論文を書いた経験があれば著作物の引用について注意を払わなければならないことは想像できるはずだ。そのような経験がなくとも、近年のインターネットでの違法ダウンロードのように著作権問題は新聞やニュースで見聞きする機会が多く、著作権について関心を寄せる機会は多い。また、特に社会科の教科書の図表にはどこどこの資料を引用・参考したか明示してあることがある。なぜそのような表記がされているのか講師たちは気づくべきだったのではないだろうか。
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