ベトナムの法務事情について
2011/10/20   海外法務, 海外進出, 外国法, その他

1.はじめに

ベトナムは正式名称を、ベトナム社会主義共和国という。人口は、約9000万人である。ベトナムは、人口の25%が15歳未満と非常に若く、資源も豊富なため、世界中の企業が投資先として注目している。首都はハノイである。国土は縦に長く南北1650km、東西600kmである。ベトナムは社会主義国家であるが1986年に導入されたドイモイ(刷新)路線によって、市場経済原理の導入と、構造改革が進んでいる。GDPは964億ドルで、一人あたり、1060ドル(日本は38543ドル)。この数値はタイの2700億ドルと比較しても低いが、今後高い経済成長が見込まれる国のひとつである。(若い人口、豊富な資源、経済改革など)

2.ベトナムに対する投資について

【1】投資額について
対越直接投資額は、2010年度は、186億ドルでそのうち日本の投資額は、22.1億ドルである。投資額の順位は、1位から順に、台湾、韓国、シンガポールである。

【2】投資規制について
外国人がベトナムに直接投資をする際に適用される法律が、「共通投資法、」「統一企業法、」の2つである。共通投資法には、投資禁止業種として、違法ドラッグ製造、売春業などがあげられている。そして、条件付き投資分野として、放送、テレビ放送、文化的作品の制作、出版、配給、鉱物の探査及び開発、長距離通信及び情報伝達網の設置、長距離通信、インターネットサービス、郵便網、空港、港湾、線路、タバコ、不動産、輸出入、教育、訓練、病院、診療所などが挙げられている。

【3】土地について
ベトナムは社会主義国家であって、土地の所有権については、認めらていない。(っとも2009年から住宅に限って、外国人もしくは、外資系企業の購入と所有が認められるようになった。

【4】資本金規制
7分野に限って、法定資本金の規制がある。
証券、銀行、債権回収、セキュリティ、航空運輸、不動産販売、映画製作である。銀行などは100億、証券業などは1億円以上の資本金が必要とされる。

3.ベトナム会社法

ベトナムにおける会社形態は、一人有限会社、二人以上有限会社、株式会社の3つである。現在、ベトナムに進出している日本企業の90%が有限会社である。しかし、現在では、外資企業であっても、株式会社の形態をとることがみとめられたため、徐々にではあるが、株式会社も増えている。株式会社形態であれば、資金調達のための株式発行などの資金調達がしやすくなるため、ファイナンスの観点からは、有限会社より優れている。

4.ベトナム競争法

ベトナムでは、商業省の管理下に置かれている、競争管理庁及び競争評議会が執行機関となる。競争評議会は10名から14名の委員で構成されている。
ベトナム競争法の規定は以下のような構成になっている。

第1章 総則(第1条~第7条)
第2章 競争制限的行為(第8条~第38条)
第3章 不公正な競争行為(第39条~第48条)
第4章 競争管理部及び競争評議会(第49条~第55条)
第5章 審査及び違反事件処理(第56条~第121条)
第6章 実施規定(第122条~第123条)
ベトナムの競争法は2003年に整備されたばかりであり、行政がどのようにこの法律を執行していくかについては、未知数といえる部分が多い。

5.ベトナム労働法

ベトナムは社会主義国家であるため、労働者の権利保護の観点から規定されている文言が多い。まず、10人以上の雇用をする企業は、就業規則の作成が必要とされ、労働主管機関への登録と労働組合役員との協議が必要とされる。また、期限付き労働契約は2回までしか認められず、2度目の更新時に労働者の希望があれば、期限の無い契約となる。現在では、労働市場の流動性が高いため、むしろ、他企業へと移ってしまうケースが多い。解雇については、制限が置かれていて、日常的な労務の不履行、懲戒事由、天災などによるやむを得ない生産の縮小、雇用削減の必要、企業活動の終了の場合に限られる。
労働組合については、10人以上の従業員がいる会社については、6ヶ月以内に作ることが要求されている。

6.ベトナム税法

ベトナムにおける法人税率は25%と日本と比較しても低い。所得税は5%~35%の累進課税である。また税務上の優遇措置として、ハイテク、新素材、新エネルギー、IT、インフラなどでは、10%もしくは、20%の優遇税率が適用される。

7.ベトナムにおける知的財産法及び模倣品対策

ハノイなどでは、模倣品が市場に溢れ、政府による取締が積極的ではない。また、偽札の流通や食品や医療品など、直接的な障害をもたらす偽物も市場に出回っている。ベトナムにおける知的財産法は、2006年に整備された。また、特許分野における裁判所の経験不足が指摘されているため、意匠や商標など複数の形態で自社製品を保護していくことが必要とされる。知的財産の保護については、司法措置、刑事措置、行政措置の3種類が用意されている。ベトナムでは、判例の公開が十分でないなど、行政がどのような対応をするか、予測できない部分があるので、知的財産分野で経験豊富な現地の代理人に依頼することが必要である。

8.ベトナムの法曹事情

ベトナムにおける法曹人口は約3万6000人である。

9.ベトナムにおける法務リスク

ベトナムは行政機関の汚職が多く、公務員の3割が賄賂を受け取るといった内容の調査がある。また、現地人の経理担当者による不正なども発生しているので、そういったリスクにも注意しなければならない。

参考文献等

「ベトナム進出・投資実務、」ベトナム経済研究所(監修)、みらいコンサルティング(編著)、2010
「ベトナムのことがマンガで3時間でわかる本、」福森哲也著、2010
「ベトナム労働法について、」高井伸太郎、藤倉哲郎著、JCAジャーナル2010年3月57巻3号
「中小企業の海外進出-ベトナムの労働法と労務管理を中心として-、」丹野勲著、商工金融2011年2月
ベトナム知的財産庁ウェブサイト
ALLENS ARTHUR ROBINSON 「Legal Guide To Investment In Vietnam」

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