オリンパス社長解任の茶番劇にみる「グローバル化」という言葉の空虚さ
2011/10/14 コンプライアンス, 民法・商法, メーカー

光学機械メーカー・オリンパスは14日、取締役会において、マイケル・ウッドフォード社長を同氏以外の取締役の全員一致で解任した。ウッドフォード氏は、オリンパスが掲げた「グローバル化」の一環として社長に選任され、今年4月から務めていた。
解任に関するプレスリリース
代表取締役の異動に関するお知らせ(2011年10月14日付)
ウッドフォード氏は4月に社長に就任したばかりだった。
社長交代に関するお知らせ(2011年2月10日付)
市場の世界化に伴い、「経営のグローバル化」ということが言われるようになってきた。「日本型グローバル経営」という言葉などその最たるものである。しかし、その意味内容は、必ずしも明確ではない。
今回、オリンパス社長を解任されたウッドフォード氏は、もともとオリンパスの欧州の現地法人で社長を務めた人物であり、外部からの招聘人事ではない。オリンパスの経営陣は、その人となりを知悉し、社長としてどのような経営方針を採用するのか容易に推測でき、考え方の相違があるならばそれを踏まえて調整しえた筈である。そうであるにもかかわらず、たった半年そこそこで「見込み違い」を理由に解任に踏み切り、結局は招聘した張本人である前の社長が復帰しただけ。傍目からはいかにも滑稽な茶番劇にしか見えない。経営陣が無能であったか、「グローバル化」という言葉が流行していてなんとなく乗っただけの所詮ポーズにすぎなかったのか、はたまたその両方か、しか考えられない。実際、今回の件でオリンパスの株価が大幅に下がっており、呆れた投資家達の溜息が伝わってくるようである。
前社長は任命責任に関する自己批判が皆無であるばかりか、他の取締役の誰も、前社長の任命責任を追求しない。これが「グローバル経営」というわけですか、という皮肉の一つも言いたくなるが、それをさておいたとしても、今回の件は、経営方針について、従来のオリンパスと、ウッドフォード氏とで、どちらが是でどちらが非か、という問題ではない。文化や風土が多様であるように、「グローバル化」が、各企業の個性やその属する国の文化などをまるで踏まえない画一化されたものであるわけはない。それぞれの企業のあり方や経営戦略に応じた、十人十色ならぬ万社万色の「グローバル化」があるということである。どこをどのように維持発展させ、どこをどのように改革するか、という点を明確にしたうえでの「グローバル化」でなければ空虚なものにすぎない。とかく横並び意識が強く、世間体ばかり気にし、美辞麗句を並べたがる独りよがりな経営者が幅を利かす傾向のあるわが国においては、今回のオリンパスと同様の失敗は繰り返されるだろう。
関連コンテンツ
新着情報
- セミナー
茂木 翔 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所/第一東京弁護士会所属)
- 【オンライン】暗号資産ファンドの最前線:制度改正と実務対応
- 終了
- 2025/05/29
- 12:00~13:00

- ニュース
- 外国産鶏肉を国産と偽装で有罪判決、誤認惹起行為について2025.10.2
- 小学校の給食に使われる鶏肉の産地を偽装したとして食肉販売会社の元代表取締役が不正競争防止法違反...

- 解説動画
斎藤 誠(三井住友信託銀行株式会社 ガバナンスコンサルティング部 部長(法務管掌))
斉藤 航(株式会社ブイキューブ バーチャル株主総会プロダクトマーケティングマネージャー)
- 【オンライン】電子提供制度下の株主総会振返りとバーチャル株主総会の挑戦 ~インタラクティブなバーチャル株主総会とは~
- 終了
- 視聴時間1時間8分

- 業務効率化
- Mercator® by Citco公式資料ダウンロード

- 解説動画
江嵜 宗利弁護士
- 【無料】新たなステージに入ったNFTビジネス ~Web3.0の最新動向と法的論点の解説~
- 終了
- 視聴時間1時間15分

- 業務効率化
- 鈴与の契約書管理 公式資料ダウンロード
- 弁護士
- 水守 真由弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号

- まとめ
- 改正障害者差別解消法が施行、事業者に合理的配慮の提供義務2024.4.3
- 障害者差別解消法が改正され、4月1日に施行されました。これにより、事業者による障害のある人への...
- 弁護士
- 境 孝也弁護士
- さかい総合法律事務所
- 〒105-0004
東京都港区新橋3-9-10 天翔新橋ビル6階