出生前診断で胎児の異常発見し中絶する例が倍増!?
2011/07/23 薬事法務, 民法・商法, その他
出生前診断で胎児の異常発見し中絶する例が倍増!?
胎児の染色体異常などを調べる目的で行われる出生前診断。この出生前診断で、胎児の何らかの異常を診断された後これを理由に人工妊娠中絶したと推定される例が、1990~99年の5381件に比べ、2000年~2009年では1万1706件と約2.2倍に急増していることが、日本産婦人科医会の調査により判明した。
近年の医学の発展により、中絶が可能な妊娠初期でも、出生前診断で行われるエコー検査等で、染色体異常の一つであるダウン症や胎児水腫等がわかるようになっている。
医学の発展が妊婦とそのパートナーに新たな難題を突き付ける結果となったのか。
人工妊娠中絶と母体保護法
第十四条 都道府県の区域を単位として設立された公益社団法人たる医師会の指定する医師(以下「指定医師」という。)は、次の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得て、人工妊娠中絶を行うことができる。
一 妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの
二 暴行若しくは脅迫によつて又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの
現状、出生前診断で胎児の異常が発見された場合、第14条1項1号に該当するとの解釈の下に、人工妊娠中絶 が度々行われている。しかし、ダウン症や胎児水腫等と母体の健康との関係が判然としない以上、このような解釈には批判も多い。
雑感
医学の進歩により、今までは死産・流産することの多かった命が救えるようになった。そして今、さらなる医学の進歩により、逆に、救えるようになった命を事前に奪う選択肢が出来てしまった。
たしかに、遺伝子等に異常のある子を出産した場合、精神的・経済的に苦しい立場に追いやられるケースも少なくない。周囲の理解・支援が期待できない場合、後に残される子供の将来を悲観することもあるだろう。
しかし、「命」というものは、そういった諸事情を超越した存在とも思える。そもそも、診断の正確性についても、いまだ100%の信頼の置けるものでもない。また、自分のお腹の中で育った命を奪うという選択肢をとることは、先々まで大きな心の傷となるおそれもある。
結局、最終的にはそれぞれの判断に委ねるしかないのだろうが、自分と子供、双方の人生を左右する重大な決断となるだけに、それぞれのパートナーと、事前にこの問題について話し合っておくことが肝要であろう。
そして、この問題の結論をどうしても出せないという場合には、胎児の異常を調べる出生前診断をあえて受けないという選択肢もあるのではないだろうか。
皆さんも、ぜひ一度はこの問題について考えてもらいたい。
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