最高裁、更新料有効と認める 今後の賃貸住宅市場への影響は
2011/07/21 不動産法務, 民法・商法, 消費者契約法, 住宅・不動産

“更新料”条項の有効判決
7月15日、最高裁は、一義的かつ具体的に記載された「更新料」条項は、更新料が、賃料や更新期間に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法上有効であるとした。
事案は、①賃料38,000円・更新料2ヶ月分・更新期間1年、②賃料52,000円・更新料2ヶ月分・更新期間2年、③賃料45,000円・更新料10万円・更新期間1年の3件である。
“更新料”とは?
賃貸住宅を借りている場合、首都圏や京都府・滋賀県などでは、賃貸借契約を更新する際に、借り手は家賃1~2カ月分程度の「更新料」を支払うことが契約で求められることがある。更新料は、賃貸借契約終了時に返還されることはない。現在全国で更新料支払いが求められている物件は100万件を超える。
かねてより更新料の正確や支払い根拠が曖昧であるため、各地でトラブルが相次いでいた。貸主側は、賃料の値下げ競争の中、月々の家賃を低く抑える効果があると主張する。一方、借主側は、礼金・保証金・更新料などの名目で、貸主に支払う金員が家賃以外にも生じることはわかりづらいと同時に支払い根拠がないと主張する。トラブルが相次いでいる理由は、更新料の性格や支払いの根拠が曖昧なためだ。
消費者契約法10条
消費者契約法
第10条 民法 、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
判決概要
更新料条項は、賃貸借契約の要素を構成しない債務を特約で借主に負わせ、消費者である借主の義務を加重するものであるとして、消費者契約法10条により無効となるかが問題となる。その判断に当たっては、更新料の性質・契約の経緯・交渉力の格差などを総合的に検討する。
更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有し、およそ経済合理性がなく、公序良俗に反するとは言えない。そうすると、更新条項が一義的かつ具体的に記載され、明確な合意が成立している場合、更新料が、賃料・更新期間に照らし高額に過ぎるなど特段の事情がない限り、消費者契約法10条により無効とはならない。
コメント
更新料に関して今後、本判決を受けて2ヶ月程度の更新料を求める家主が増加することを懸念する動きもある。しかし、賃貸住宅市場は現在買い手市場であり、更新料などの不明確な名目での金員授受に対して批判が高まっている。また、貸主側からも、日本賃貸住宅管理協会が、加盟企業に対して、家賃以外の支払額も含めた「めやす賃料」の表示を求めるなど、賃貸住宅市場における表示の見直しの動きが進んでいる。以上からすれば、本判決で更新料条項の有効性は認められたものの、わかりやすい賃料表示を求める動きは加速すると思われる。
借主側としては、賃貸借契約締結前に、納得のいくまで支払条項の算定根拠、必要性について貸主側に説明を求めることが、トラブルを避ける手段として有効である。
【関連リンク】
・最高裁判所第二小法廷 平成23年07月15日判決(pdf)
・消費者契約法
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