「資金繰りの厳しさ」理由に点検行わず、八王子のアパート階段崩落事故で元会長を書類送検
2025/02/27 コンプライアンス, 刑事法, 住宅・不動産, 建設

はじめに
東京都八王子市で2021年4月、アパート屋外の階段の一部が崩れ、住人女性が転落死する事故がありました。警視庁は今年2月14日、施工を行った建設会社株式会社則武地所の元会長で、実質的経営者だった男性を業務上過失致死容疑で書類送検しました。
この事故を受けて、国土交通省は屋外階段などでの事故防止のためガイドラインを策定しています。
女性が転落死 アパートは点検・修繕されず
事故が起きたのは、東京都八王子市の築8年のアパート。3階に住んでいた女性(58)が2階へ続く屋外の階段を登っていたところ、階段の一部が崩れ、女性が2メートル下に転落。頭を強く打ち、病院に搬送されましたが、死亡が確認されました。
階段の段差部分などは鉄製だったものの、踊り場が木製で腐食が進んでいました。その踊り場には防腐措置が施されておらず、階段との接合部分の金具の溶接も不十分だったということです。
事故前から予兆がみられていました。2019年9月以降、則武地所が施工した複数のアパートから苦情が十数件寄せられていました。中には「階段が腐食している」などの苦情も含まれていたということです。さらに2020年には、則武地所が施工した相模原市内のアパートで階段が腐食し、崩落。住人男性が軽いけがをする事故が起きていました。
こうした状況を受け、社内では当時、一斉点検の実施を行う提案がされていたということです。しかし元会長は資金繰りの厳しさを理由に一斉点検などを行いませんでした。警視庁の任意の取調べで「苦情があった物件にだけ対応し、新築の施工を優先した」と話していたということです。
警視庁は、元会長が階段崩落の危険性を分かっていたものの、一斉点検や修繕を指示しなかったことが事故を引き起こしたと判断し、書類送検に至りました。
国交省ガイドラインで防腐措置など盛り込まれる
国土交通省は2021年の事故を受けて、則武地所が施工に関わった東京都と神奈川県の2階建て以上の共同住宅214棟の調査を実施しました。その結果、6棟で屋外の階段に腐食や劣化が見つかったといいます。その後、安全対策として、仮設の柱を設置するなどの措置を行っています。
また、同様の事故が発生しないよう、国土交通省は2022年にガイドラインを策定し、以下の3点が追加されました。
(1)設計時における防腐措置等の内容の明確化
(2)工事管理および完了検査時における屋外階段の適切な照合・適合確認の確保
(3)適切な維持管理の確保
特に(1)については、次のように具体的に定められています。
・設置環境への配慮
階段設置場所の温度や湿度、日照条件などを確認すること
・階段部材の防腐・防錆措置
階段部材や建築物の木造部分との接合部への水分侵入を防止するための処理を行うこと。また、階段へ流入した水分が排水、乾燥するような滞留防止措置を講じること、など。
・点検を行える構造
階段部材および建築物の木造部分との接合部について適切な点検を行える構造とする
・支持方法
階段の自重や人・物の通行を考慮した積載荷重などに耐えられる適切な支持方法とする。(通行時の繰り返し荷重による影響を必要に応じて考慮する)
他にも、避けるべき設計・施工事例や維持管理事例についても言及されています。
コメント
2021年に発生した痛ましい事故。施工不良と管理体制の不備により引き起こされたものと考えられます。
会社には事故の数年前から苦情が寄せられていた上、同様の事故がすでに発生していました。元会長が一斉点検などを見送った判断には大いに疑問が残ります。
適切な点検や修繕を行うことの重要性を改めて認識する事案となりました。
新着情報
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