小林製薬が監査等委員会設置会社への移行を提案、筆頭株主は反対表明
2026/03/11   商事法務, 総会対応, 会社法, 医療・医薬品

はじめに

紅麹サプリ問題で揺れる小林製薬が今月開催予定の定時株主総会で監査等委員会設置会社への移行を提案する方針であることがわかりました。これに対し同社株主である投資ファンドが反対を表明しているとのことです。今回は会社法の監査等委員会設置会社について見直していきます。

 

事案の概要

報道などによりますと、小林製薬は今月27日に予定されている定時株主総会で、執行と監督の機能を分離する「監査等委員会設置会社」への移行と元社長の取締役選任を提案する予定だといいます。

これに対し、同社の株式を13%以上保有する筆頭株主である「オアシス・マネジメント」は会社側の提案に反対を表明しているとのことです。

会社からの提案の中には、「重要な業務執行の決定の全部または一部を取締役に委任することができる」旨の定めを定款に置くというものが含まれているとされ、『創業家による支配をより強固なものにするおそれがある』として、オアシス・マネジメントは警戒を示しているといいます。

ちなみに、オアシス・マネジメントは、紅麹問題に関連して当時の取締役ら7人に対し約135億円の賠償を求める株主代表訴訟も提起しているとされます。

 

監査等委員会設置会社とは

監査等委員会設置会社とは、会社法の2015年改正で導入された株式会社の機関設計の一種で、監査役の代わりに取締役会の内部に監査等委員会を置きコーポレートガバナンスの強化を図った制度です。

会社法では従前、2003年から導入された委員会設置会社の制度が置かれていましたが、同制度では指名委員会、報酬委員会、監査委員会の三委員会を設置し、それぞれの委員会で過半数が社外取締役である必要があり会社の負担が非常に大きい機関設計となっていました。経済界からはより柔軟な機関設計を求める声が高まり2015年改正で監査等委員会設置会社の導入に至りました。

これにより社外監査役の設置が不要となり、最低限2名の社外取締役の確保によって要件を満たすことができ会社の人材確保の負担が大幅に軽減されたと言えます。

 

監査等委員会設置会社の機関構成

監査等委員会設置会社では取締役会、監査等委員会、会計監査人の設置が義務付けられます。監査等委員会は3名以上の監査等委員である取締役で構成されその過半数は社外取締役である必要があります。

通常の取締役と監査等委員である取締役は区別され株主総会で選任されますが(会社法329条2項)いずれも取締役会を構成することになります。監査等委員である取締役は代表取締役となることができないため監査等委員会設置会社では監査等委員となる取締役3名と代表取締役となる取締役1名の最低4名を用意する必要があります。

監査等委員である取締役の任期は原則として2年ですが、監査等委員でない取締役の任期は原則として1年となっています(332条1項、3項、4項)。監査等委員である取締役を解任する場合は監査役と同様に株主総会の特別決議を要します(344条の2第3項、309条2項7号)。

 

重要な業務執行の決定委任

本来、会社法では、
(1)重要な財産の処分・譲受け
(2)多額の借財
(3)支配人その他の重要な使用人の選任および解任
(4)支店その他の重要な組織の設置・廃止
(5)募集社債に関する事項
(6)役員の責任免除といった重要な業務執行の決定

については取締役に委任することができず取締役会で行う必要があります(362条4項)。

しかし、監査等委員会設置会社では取締役の過半数が社外取締役である場合、これら重要な業務執行の決定を取締役に委任することが可能となっています(399条の13第5項)。
これは監督機能が強化された監査等委員会設置会社では、監督者が逐一決定に関与するのではなく各取締役に委任し、監督者はできるだけ監督に専念すべきとの考え方によるとされます。

なお、重要な財産の処分・譲受け、多額の借財については一定の要件の下「特別取締役」に決定を委ねることが認められていますが(372条1項)、監査等委員会設置会社で取締役の過半数が社外取締役である場合は「特別取締役」を置くことができません。

これは上記のようにこのような会社は重要な業務執行の決定を取締役に委任できるため「特別取締役」を置く意味がないからです。

 

コメント

現在、小林製薬の定款では、監査役・監査役会・会計監査人の設置が定められていますが、「定款を変更して監査等委員会設置会社へ移行する」提案を取締役会で決定したとされます。

それに加えて、監査等委員である取締役3名、監査等委員でない取締役7名、補欠取締役1名の選任議案も提出される予定です。候補者の詳細は不明ですが、取締役の過半数は社外取締役であると考えられています。

以上のように、会社法では従来の監査役会設置会社、指名委員会等設置会社の他にその中間的な監査等委員会設置会社の機関設計が用意されています。欧米で一般的な委員会設置会社よりも柔軟で負担の少ない機関設計となっており、取締役4名に加え会計監査人1名の計5名で設置が可能となっています。

ガバナンスの強化と経営体制の刷新が求められる際にはどのような機関設計があるのかを把握し、柔軟に選択肢を検討していくことが重要と言えるでしょう。

 

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