成年後見を欠格事由とする警備業法の条項に違憲判決 ー最高裁
2026/02/25 労務法務, コンプライアンス, 法改正, 警備業法, サービス

はじめに
成年後見制度を利用したことにより欠格条項に該当し警備会社を退職することとなった男性が国に賠償を求めていた訴訟で18日、最高裁が警備業法の欠格条項を違憲とする判決を出していたことがわかりました。法令が違憲と判断されたのは戦後14件目とのことです。
事案の概要
報道などによりますと、原告の男性は岐阜県在住で軽度の知的障害があり、2014年から警備会社で交通誘導の仕事をしていたといいます。ところが、2017年に成年後見制度の保佐人をつけたことにより、警備業法の欠格条項に該当したとして、退職を余儀なくされたとのことです。
男性は2018年に国会の立法不作為を理由に国に賠償を求め提訴しました。
一審の岐阜地裁は警備業法の欠格条項を違憲と判断し、国に10万円の賠償を命じました。二審の名古屋高裁も同様にこの欠格条項を違憲とし、賠償額を50万円に増額していました。
なお、当時、警備業法をはじめ国家公務員法など約180の法律に同様の欠格条項が定められていましたが、2019年の法改正で全て削除されており、現在の警備業法には成年後見制度利用を欠格事由とする条項はありません。
欠格条項とは
「欠格条項」とは、各種法令で特定の資格や職務に就くために必要な要件を満たさない事由を定めた規定をいいます。年齢や刑罰の経歴、障害の有無などが典型例です。特定の資格や職務においてこれらの事由に該当する場合は一律で不適格となります。
たとえば、本件で問題となった警備業法では現在、破産者や拘禁刑または罰金刑に処せられ執行後5年を経過していない場合、過去5年間で警備業法等の違反があった場合、アルコールや麻薬等の中毒者、心身障害により警備業を適正に行うことができない者などが欠格事由として規定されています(3条各号)。
それ以外でも、たとえばかつては医師や看護師などで「視覚や聴覚の機能障害」が欠格事由とされていました。
これらの欠格条項を巡っては従来から、「成年後見制度の利用や障害を一律に欠格事由に含めるべきではない」とする声も多く、問題視されてました。
そうした流れもあり、現在では、成年後見制度については欠格事由から除外され、個別審査規定が代わりに設けられるようになっています。
成年後見制度とは
本件で原告の男性が利用した成年後見制度。成年後見制度とは、判断能力が不十分な人が契約や財産管理等で不利益を被らないよう保護する制度とされます。
たとえば、認知症になった高齢者が訪問販売等で不必要な高額商品を購入したり、大事な不動産を著しく低廉な価格で販売してしまうといった被害を防ぐことができます。
成年後見制度は民法で定められた法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。
法定後見では判断能力の程度によって後見、保佐、補助に分かれており、「事理を弁識する能力を欠く状況」の場合は後見人が、「事理を弁識する能力が著しく不十分」な場合は保佐人が、「事理を弁識する能力が不十分」な場合は補助人が裁判所の審判により付されることとなります(民法7条、11条、15条)。
成年後見人が付されている場合、本人が行った行為は日用品の購入など日常生活に関するもの以外は取り消すことができます(9条)。これは成年後見人の同意の有無に関わらないとされています。
かつて旧制度の時代では禁治産宣告を受けた場合、戸籍に記載されていましたが、現在では成年後見開始がなされても戸籍に記載されることはなく、法務局が管理する後見登記簿に記録されることとなります。
会社法の欠格条項
上記のような欠格条項は会社法にも存在します。会社法331条1項では取締役になることができない欠格事由が規定されており、
(1)法人
(2)会社法や金商法、破産法などの会社関連法令違反で刑の執行が終わり、または執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
(3)それ以外の法令に違反し禁錮以上の刑に処せられ執行が終わっていない者
が挙げられています。
令和元年改正以前はこれらに加え成年被後見人、被保佐人が欠格事由として規定されていましたが、成年後見制度の利用を躊躇させる要因となっていると指摘されていたことから削除されたという経緯があります。
そのため、現在では成年被後見人等は取締役になることはできますが、その就任承諾は後見人が本人の同意を得た上で行うこととなります(331条の2)。
なお、取締役就任中に後見開始の審判を受けた場合、会社法上は欠格事由ではありませんが、民法上は委任の終了事由であることから一旦退任することとなります(民法653条3号)。
コメント
本件で最高裁は警備業法の成年後見制度の被保佐人を欠格事由としている条項は、制定当時の心神耗弱者に適正な警備の実施は期待できないという理由には相応の合理性があったとしつつ、その後の社会や国民意識の変化により一律の排除は立法府の合理的裁量の範囲を逸脱し、憲法22条1項と14条1項に違反すると判断しました。
以上のように現在では成年後見制度の利用を欠格事由とする各種法令の条項は削除されています。
しかし、職種や資格の性質上、様々な欠格条項は各法令に多数存在しており、会社法にも取締役や監査役などについて欠格や兼任禁止規定が多数置かれています。
どのような場合に欠格となるかを自社の業務内容や職種に照らして正確に把握し、社内で周知しておくことが重要といえるでしょう。
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