ヤマハ発動機がジュビロの株式取得、子会社化へ
2026/02/05 商事法務, 総会対応, 戦略法務, 会社法, メーカー

はじめに
ヤマハ発動機は1月29日、株式会社ジュビロの発行する新株を取得する旨発表しました。
これによりジュビロを子会社化するとのことです。今回は子会社化の手法について見ていきます。
事案の概要
株式会社ジュビロでは1月29日に臨時株主総会が開かれ、第三者割当増資による新株発行が決議されヤマハ発動機が取得することとなりました。
これによりヤマハ発動機がジュビロの議決権の過半数を取得し、ジュビロが子会社となります。
1972年に創部したヤマハ発動機サッカー部が1994年にジュビロ磐田としてJリーグに昇格して以降30年以上にわたり、メインパートナーとして同クラブを支援し続けてきたヤマハ発動機。
今回のジュビロの子会社化には、ヤマハ発動機として、ジュビロ磐田の歴史と文化を尊重しながらクラブの価値向上に貢献し、地域社会とともに発展して行きたいという意図があるとされています。
新株発行による子会社化
会社が他の会社を子会社化する方法は多岐にわたりますが、まず考えられるのが「第三者割当による募集株式発行」です。
これは子会社となる会社が親会社となる会社に対して新たに株式を発行して割り当てるというものです。
今回のヤマハ発動機によるジュビロの子会社化もこの方法により行われたといいます。
募集株式の発行手続きはその会社が公開会社であるか非公開会社であるか、また株主割当であるか第三者割当であるかで手続きが異なってきますが、ここでは第三者割当について触れておきます。
まず、公開会社が第三者割当で募集株式を発行する場合、取締役会決議によって募集事項を決定します(会社法201条1項、199条)。
定めるべき募集事項は、(1)発行する株式の数、(2)払込金額または算定方法、(3)払込期日、(4)増加する資本金および準備金となります。
そして、払込期日の2週間前までに株主に通知、または公告し(201条3項、4項)、また引き受けようとする者へ通知がなされます(203条1項)。
その後申し込みに対して割当を決定し、払込期日の前日までに通知します(204条1項)。
特定の者が全て引き受ける総数引受契約の場合は、通知や割当などの手続きは不要です。
これが非公開会社の場合は、募集事項の決定は株主総会の特別決議を要します(199条2項、309条2項5号)。
そして、申込みに対する割当決定についても取締役会決議、または株主総会特別決議が必要です。
株式交付による場合
他にも、会社を子会社化する手法として「株式交付」という制度が存在します。
これは令和3年3月1日施行の改正会社法で新しく導入された制度です。
会社法2条32号の2によりますと、株式交付とは株式会社が他の株式会社をその子会社とするために当該他の株式会社の株式を譲受け、当該株式の譲渡人に対して対価として当該株式会社の株式を交付することを言うとされています。
つまり、親会社となる会社が子会社となる会社の株主から株式を譲受け、その対価として親会社となる会社の株式を交付するというものです。
手続きとしては、親会社となる会社が株式交付計画を作成して事前開示書類を備え置き、株主総会の特別決議によって承認を受け、債権者異議手続、子会社となる会社の株主へ通知・公告を経て、申込みに対し割当を決定・通知、効力発生日に親会社となります。
株式交付はM&Aの一種ともいえますが、子会社となる会社自体はなんら手続きがないということです。
そのため、株式交付「契約」ではなく「計画」となっています。
株式交付のメリットは、株式を対価として相手会社の株式を取得できるということです。
株式交換による場合
上記の株式交付はあくまでも親子会社の関係を構築することを目的とする制度です。
つまり、議決権の50%超の取得しか求めていない場合に利用する制度です。
これに対して「株式交換」は相手会社の株式100%の取得を目的としています。
株式交換の手続きとしては、当事会社で株式交換契約の締結、事前開示書類の備え置き、株主総会で特別決議による承認、債権者異議手続き、株券や新株予約権の提出手続き、対価の支払、事後開示書類備え置きとなっています。
株式交換は歴とした組織再編行為であることからやや手続きは重いものとなっていますが、議決権の3分の2の賛成で全ての株式を取得できるというメリットがあります。
また、株式交付は株式会社と株式会社でしか利用できませんが、株式交換は親会社側が合同会社でも利用できるという特徴があります。
コメント
本件で株式会社ジュビロの臨時株主総会で承認された第三者割当により新株発行でヤマハ発動機が株式を取得するという手法で親子会社関係が成立することとなりました。
親子会社関係を構築する方法としては非常にわかりやすい手法といえます。
親子会社となる手法は多岐にわたり、上で触れた手法以外にも市場で買い集めたり、また他の株主から譲り受けるといった場合も考えられます。
従来は子会社となる会社から株式発行を受けても、それに対して自社の株式を提供することは現物出資規制や税制上の問題から難しく断念することもあったといわれていますが、現行会社法では株式交付といった手法も用意されています。
自社や相手会社がどのような関係を構築したいと考えているのか、また資金やそれぞれのステークホルダーの意向など様々な要素を加味して、もっとも適切な手法を選択していくことが重要といえるでしょう。
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