米投資ファンドが江崎グリコに「自己株式の取得」を提案意向か
2026/01/21 商事法務, 総会対応, 会社法, 食料品メーカー

はじめに
米投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」が2026年3月開催予定の株主総会に向け、江崎グリコに対し株主提案を行う意向を示したと報じられました。
提案には、大規模な自社株買いの実施などが含まれているとされます。
事案の概要
報道によれば、江崎グリコの大株主であるダルトン・インベストメンツは、同社の3月の株主総会に向けて以下の4項目の株主提案を行ったとされます。
(1)取締役2名の選任
(2)1年以内に350億円を上限とする自己株式の取得
(3)役員に対する株式報酬制度の拡充
(4)資本コストや株価に配慮した経営方針を定款に明記すること
中でも自己株式の取得に関する提案については、江崎グリコの過去5年間の平均ROE(株主資本利益率)が4%台にとどまっており、同社が掲げるROE6~8%の目標との乖離が指摘されています。ダルトン側は、資本効率の改善を求めて、前年の自己株取得額(約270億円)を上回る規模での実施を提案している形です。
自己株式の取得とは
自己株式の取得とは、株式会社が自社が発行した株式を取得することをいいます。
一口に自己株式取得と言ってもその態様は様々で、取得請求権付株式の株主から取得請求された場合や、取得条項付株式の取得、譲渡制限株式の譲渡に際して会社が承認しない場合、組織再編などに際して反対株主による買取請求があった場合などが挙げられます。
かつて旧商法下では会社の財産的基盤を損なうおそれがあるなどの理由から原則として禁止されていましたが、現行会社法では原則として許容されており、取得した自己株は期間の制限なく保有し続けることが可能です。
ただし、自己株式は通常の株式と異なり、議決権や剰余金配当請求権、残余財産分配請求権、株主割当による募集株式の割当を受ける権利、株式や新株予約権の無償割当を受ける権利など様々な権利が制限されています(会社法308条、453条カッコ書き、504条3項カッコ書き等)。
また、自己株式の取得は株主への出資の払い戻しの側面があり、会社債権者保護の観点から一定の財源規制を受けることとなります(461条1項)。
つまり、原則として分配可能額を超えて取得はできないということです。例外として単元未満株式の取得や組織再編によって相手会社からの取得、組織再編等での反対株主による買取請求による取得は財源規制を受けません。
株主との合意による取得
上記のように自己株式を取得する場面は様々ですが、会社が能動的に株式を取得する方法としては市場から買い取る方法、TOBによる方法、株主との合意による方法があります。
市場取引による場合は上場会社である必要がありますが、TOBは上場していない会社でも可能です。
そして、株主との合意によって買い取る場合は全ての株主を対象とする場合と特定の株主を対象とする場合に分けることができます。
株主との合意による取得をする場合、その手続としてはまず、株主総会であらかじめ(1)取得数、(2)取得と引き換えに交付する金銭等、(3)取得期間を決定しておく必要があります(156条1項)。
取得期間については1年を超えることができません。
この株主総会決議は、すべての株主を対象とする取得の場合は普通決議で、特定の株主を対象とする場合は特別決議で行う必要があります。
この決議に基づいて取締役または取締役会の決定で取得を実行していくことになります。
なお、取得に際しては株主への通知または公告がなされることになります。
自己資本利益率とは
ここで、自己資本利益率(ROE)についても簡単に触れておきます。ROEとは「Return On Equity」の略で、株主が出資したお金を元手に会社がどれだけの利益を得ることができたかを数値化したものいいます。
具体的には当期の純利益を自己資本で割り、パーセント化したものです。
純利益とは会社が1事業年度の営業活動で株主全体にもたらした利益を言うとされ、自己資本とは株主が出資した金銭など返済する必要のない資産を言うとされます。
たとえば、株主からの出資金が1億円で、1事業年度での最終的利益が5000万円であった場合はROEは50%ということです。
ROEが高いほど自己資本をうまく使い、効率よく利益を得ていると言えます。
逆にROEが低いほど経営効率が悪いということになるとされています。投資家から見た場合、一般的にROEが10%を超えている会社は投資価値が高いとされています。
コメント
江崎グリコは、株主資本利益率(ROE)を6~8%とすることを経営目標として掲げているとされますが、実際の過去5年間の平均ROEは4%台にとどまっているといいます。
こうした状況を踏まえ、ダルトン・インベストメンツは、資本効率の改善策として、350億円を上限とする自己株式の取得を提案しています。
ちなみに、同社は過去にも株主からの提案に応じた例があり、今回も株主総会での対応が注目されています。
会社法上、自己株式の取得には一定の財源規制が設けられていますが、基本的にはその取得自体が認められており、資本政策の一環として幅広く活用されています。具体的には、流通株式数の適正化を通じた株価の安定、あるいは将来的なM&Aの対価としての活用など、複数のメリットがあります。
自社の財務状況や資本政策上の必要性を踏まえ、どのようなケースで取得が可能となるのか、また取得にあたってどのような手続きが求められるのかを事前に整理しておくことが、実務上は極めて重要といえるでしょう。
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