美容液の誇大広告で通販会社に業務停止命令、特商法の規制について
2025/07/03 コンプライアンス, 広告法務, 特定商取引法, 景品表示法, メーカー, 小売

はじめに
美容液の誇大広告を行っていたなどとして、消費者庁が先月27日、通販会社に6ヶ月間の一部業務停止命令を出していたことがわかりました。
あたかも、使用するだけですぐにシワがなくなるかのように誤認させるような表示を行っていたとのことです。
今回は特定商取引法の規制について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、通販会社「株式会社VIRTH」(渋谷区)は、販売する「B.D SHOT100 MOISTURE SERUM」の広告で、
「そのシワなかったことに!たった3秒でピーン!」などと、使用するだけであたかもすぐにシワやたるみがなくなるような表示をしていたとされます。
これに対し、消費者庁が期間を定めて表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたものの、合理的な根拠とは認められなかったとのことです。
同社を巡っては2024年頃から1260件の相談が寄せられていたとされていますが、消費者庁はこの程、6ヶ月間の一部業務停止命令を出し、再発防止を求めました。
特定商取引法の誇大広告規制
特定商取引法12条によりますと、販売業者は通信販売をする場合の広告について、商品の性能、内容、契約の申し込みの撤回または解除に関する事項、その他主務省令で定める事項について、「著しく事実に相違する表示をし、または実際のものよりも著しく優良または有利であると人を誤認させるような表示」をしてはならないとされています。
また、主務省令である特商法施行規則26条では、種類、性能、品質、効能、効果のほか、商品や役務に対する国や自治体、その他著名な団体や個人の関与、原産地や製造地、商標や製造者名についても、誤認させる表示をしてはならないとされています。
さらに12条の2では、主務大臣はこれらの表示に該当するか否かを判断するために必要があると認めるときは、期間を定めて表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができるとしています。
提出がない場合は、違反する表示に該当するものとみなされます。
誇大広告規制違反のペナルティ
上記の誇大広告を行った場合には、主務大臣は2年以内の範囲で業務の全部または一部の停止を命じることができるとされています(15条1項)。これが「業務停止命令」です。
さらに、命令の理由となった事実や行為者の責任の程度などを考慮して、命令の実効性を確保するために相当と認められるものに対し、業務を新たに開始することの禁止を命じることができます(15条の2)。こちらは「業務禁止命令」と呼ばれます。
業務停止命令を受けても、新しく会社を設立して同じ行為を行うのであれば行政処分が無意味となってしまいます。そこで、法人の役員など内部の人間に着目して業務の禁止を命じるものです。
これに違反した場合は、3年以下の禁錮、300万円以下の罰金、またはこれらの併科となっています(70条3号)。また、誇大広告行為自体にも100万円以下の罰金が規定されています(72条1号)。
景表法との関係
一般的に知られているように、景表法にも同様の規制が存在します。それが優良誤認表示と有利誤認表示です。成立要件もほぼ同様となっています。
景表法が消費者一般の利益を保護することを目的としているのに対し、特定商取引法は購入者の利益と商品・役務の流通と提供を円滑にし、国民経済の健全な発展を目的としています。主務官庁はいずれも消費者庁です。
両者の大きな違いは、その違反に対する処分や罰則にあります。
景表法では差止や再発防止を命ずる措置命令と課徴金納付命令、勧告や公表があり、措置命令違反に対して罰則があります。これに対して、特定商取引法では、上でも触れたように業務停止命令と業務禁止命令、そして誇大広告行為そのものに対する直罰規定があります。
消費者庁でも、両者の連携によって悪質な事業者への対策を進めるべきとの議論がなされています。
コメント
本件でVIRTH社は、美容液の広告で使用するだけであたかもすぐにシワやたるみがなくなるような表示をしていたとされます。しかし、これを裏付ける合理的な根拠は提供できなかったとのことです。
消費者庁は6ヶ月間の一部業務停止命令を出しました。景表法ではなく特商法が適用されたのは、業務禁止も有り得ると示唆し、牽制することが狙いなのではないかと考えられます。
以上のように、不当表示や誇大広告には景表法だけでなく、特商法による規制も置かれています。特に特商法の罰則は重く、行為に対する直罰規定も存在します。
自社製品の広告を出している場合は、効果を裏付ける根拠を出すことができるのか、今一度見直して社内で周知しておくことが重要と言えるでしょう。
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